第6回:OracleCloudとAmazonRDSの価格&性能比較結果~日本リージョン対決~
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本記事は、「第4回:OracleCloudとAmazonRDSの価格&性能比較結果」の日本リージョン編です。各クラウドの価格や性能を評価してみました。
目次
1.検証背景
Oracle Cloudの日本リージョンが誕生しましたので、「日本リージョン対決」と題して、AmazonRDSと価格性能調査を実施しました。
2.検証目的
以下、各クラウドのサービス概要についてはWebで公開されていますが、価格/性能の詳細については不明瞭です。本検証では、実際にクラウド環境を利用した比較検証を行い、第三者の観点で、価格/性能を評価することを目的とします。
サービス名 | サービス形態 |
---|---|
Oracle Database Cloud Service(Oracle Cloud) | PaaS |
Amazon Relational Database Service(Amazon RDS) | PaaS |
3.検証環境
本検証では一般的なデータベースの開発環境を想定し、以下環境での価格/性能を比較しました。
DBプロダクト
Oracle Database 18c Standerd Edition (シングル/ライセンス込み)
物理構成
サービス名 | CPU | メモリ | DB領域 | ディスク種別 | 構成 |
---|---|---|---|---|---|
Oracle Cloud | 1OCPU | 15.00GB | 256G | 指定なし | シェイプ・タイプ:VM.Standard2.1 |
Amazon RDS | 2vCPUs | 15.25GB | 256G | 汎用SSD | DBインスタンスクラス:db.r4.large |
※CPUは1物理コア(2論理コア)で合わせた。また、Oracle CloudはDBCS(OCI Classic)ではなく、最新の「第2世代アーキテクチャ」(OCI DBaaS)を利用。
DB領域はOracle CloudのOCI DBaaSの最低が256GBであることからAWS RDS側を合わせた。
4.検証方法
検証方法:性能
検証No. | 検証概要 |
---|---|
1 |
DBMS_RESOURCE_MANAGER.CALIBRATE_IOでの物理I/O性能の確認 データベース管理者ユーザで接続し、サーバサイドのDBMS_RESOURCE_MANAGERパッケージを利用し計測。 |
2 |
1GBデータのINSERT時間の測定(1/3/6/9多重で計測) ネットワーク速度の影響を無くす為、データのインサートはPL/SQLブロックにてサーバサイドでINSERTし計測。 |
3 |
1GBデータのSELECT時間の測定(1/3/6/9多重で計測) ネットワーク速度の影響を無くす為、SELECTデータのフェッチはレコード件数とした。 |
4 |
1GBデータのSELECT時間の測定(1時間毎に24時間計測) 時間帯による性能の差異がないか、3と同様の方法で各時間帯での性能を計測。 |
※各検証は計測前に毎回データベースの共有プール/バッファキャッシュをクリアし、物理I/Oの性能を確認できるように配慮した。また、Oracle Database の初期化パラーメータ等、構成の変更は行わず、デフォルト構成での比較としました。
検証方法:価格
上記検証を含む1週間(168時間)での、各クラウドからの請求書にて価格比較を行いました。
(検証時に実行したSQLは各クラウドで同一とし、1週間(168時間)経過後、環境を削除)
サービス名 | 課金区分 | リージョン |
---|---|---|
Oracle Cloud | 従量制(Pay as you go) | 日本東部(東京) |
Amazon RDS | 従量制 | 東京 |
5.検証結果
検証結果:性能
サービス名 | IOPS | MB/s | latency |
---|---|---|---|
Oracle Cloud | 15052 | 118 | 3 |
Amazon RDS | 6480 | 48 | 19 |
前回:DBCS(OCI Classic)
今回:OCI DBaaS(第2世代アーキテクチャ)
※Oracle CloudのDBCS(OCI Classic)は日本東部(東京)リージョンでは利用できなくなっています。
(US East リージョンではまだメニュー上にDBCS(OCI Classic)が存在しますが、
最終的にはOCI DBaaSに統合されていくと考えられます。)
検証結果:価格
サービス名 | 請求金額 |
---|---|
Oracle Cloud | 9,034 |
Amazon RDS | 12,200 |
6.総括
各クラウドの特性/注意点を総括として以下に示します。
Oracle Cloud | Amazon RDS | |
性能 | 物理I/Oが高速(IOPS保障なし) | 物理I/Oが低速(IOPS保障あり) |
価格 | 若干安い設定 | 若干高い設定 |
構成 | 設定の自由度は高いがDBを壊す可能性がある | DBを壊すことが出来ないように十分配慮されている |
保守 | マニュアルが分散しており、分かりづらい | マニュアルが纏まっており、分かりやすい |
運用 | 管理GUIの変更が頻繁で、煩雑な印象 | 管理GUIが洗練され、操作も確立されている |
本検証では、Oracle Cloudの性能/価格が共に良好な結果でありましたが、Oracle CloudはDBCS(OCI Classic)から「第2世代アーキテクチャ」(OCI DBaaS)へ変わっていることから利用の際は注意が必要です。
今回利用のOracle Cloudの第2世代アーキテクチャでは「Identity and Access Management Service(IAM)」、「Virtual Cloud Network(VCN)」、「可用性ドメイン(AD)/フォルト・ドメイン(FD)」等も加わり、AWSとの機能的な差は縮まっているように感じられました。また、Oracle Cloudは西日本リージョンの開設も予定されていることから、国内でDR環境を構成できるようになる大きなメリットがあり、今後、クラウド選定の要素になりそうです。
※弊社では性能/価格のみで安易にクラウド基盤を利用するのではなく、「アプリケーションとの親和性」「移行方式」「ネットワーク」「セキュリティー」「保守/運用」等を含め、総合的に基盤を選定することが重要と考えております。