第4回:OracleCloudとAmazonRDSの価格&性能比較結果
情シス担当者向け・他の会社はどうしてる?DBお悩み相談
第3回 では、クラスタ構成のOracleライセンス費用のハードパーティションの活用に関しましてご紹介させていただきました。
第4回では、弊社が第三者目線で「Oracle Database Cloud Service(Oracle Cloud)」と「Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)」に対して同等リソースの環境を用いた独自の項目で比較検証(実利用料金の比較も含む)をご紹介させていただきます。
目次
1.検証背景
昨今では、コスト削減やシステムの柔軟性等の理由で、インフラ環境にクラウドを検討している企業の割合が増えてきております。
しかしながら、各クラウドサービスは、Webで概要を公開しているものの、価格や性能の詳細については不明瞭である現状が見受けられます。
2.検証目的
本検証では実際に以下サービスのクラウド環境を利用した比較検証を行い、 第三者の観点で、価格/性能を評価することを目的とします。
サービス名 | サービス形態 |
---|---|
Oracle Database Cloud Service(Oracle Cloud) | PaaS |
Amazon Relational Database Service(Amazon RDS) | PaaS |
3.検証環境
本検証では一般的なデータベースの開発環境を想定し、以下環境での価格/性能を比較しました。
DBプロダクト
Oracle Database 12c R1 Standerd Edition(シングル/ライセンス込み)
物理構成
サービス名 | CPU | メモリ | DB領域 | 構成 |
---|---|---|---|---|
Oracle Cloud | 1物理コア | 7.5G | 50G | コンピュートシェイプ :OC3 |
Amazon RDS | 1物理コア | 8.0G | 50G | DBインスタンスクラス: db.m4.large |
※ディスクは共にデフォルトの汎用DISKを利用。(上記メモリサイズに差はあるが、最も近い構成を選定)
4.検証方法
検証方法:性能
検証No. | 検証概要 |
---|---|
1 |
DBMS_RESOURCE_MANAGER.CALIBRATE_IOでの物理I/O性能の確認 データベース管理者ユーザで接続し、サーバサイドのDBMS_RESOURCE_MANAGERパッケージを利用し計測。 |
2 |
1GBデータのINSERT時間の測定(1/3/6/9多重で計測) ネットワーク速度の影響を無くす為、データのインサートはPL/SQLブロックにてサーバサイドでINSERTし計測。 |
3 |
1GBデータのSELECT時間の測定(1/3/6/9多重で計測) ネットワーク速度の影響を無くす為、SELECTデータのフェッチはレコード件数とした。また、物理I/O性能の測定を目的としていることから、索引は構成せず、テーブルフルスキャンにてSELECTし計測。 |
4 |
1GBデータのSELECT時間の測定(1時間毎に24時間計測) 時間帯による性能の差異がないか、3と同様の方法で各時間帯での性能を計測。 |
※各検証は計測前に毎回データベースの共有プール/バッファキャッシュをクリアし、物理I/Oの性能を確認できるように配慮した。また、Oracle Database の初期化パラーメータ等、構成の変更は行わず、デフォルト構成での比較としました。
検証方法:価格
上記検証を含む1週間(168時間)での、各クラウドからの請求書にて価格比較を行いました。
(検証時に実行したSQLは各クラウドで同一とし、1週間(168時間)経過後、環境を削除)
サービス名 | 課金区分 | リージョン |
---|---|---|
Oracle Cloud | 従量制(Pay as you go) | 北アメリカ |
Amazon RDS | 従量制 | 北カリフォルニア |
5.検証結果
検証結果:性能
サービス名 | IOPS | MB/s | latency |
---|---|---|---|
Oracle Cloud | 95327 | 1058 | 0 |
Amazon RDS | 3053 | 52 | 19 |
AWS RDSで同等の性能を実現するには「Provisioned IOPS」が指定可能なSSD(要追加料金)を選択する必要があると考えられます。
また、Oracle CloudのSELECTに関しては、多重度が上がってもレスポンスの劣化が非常に少ないことが確認されました。
検証結果:価格
サービス名 | 請求金額 |
---|---|
Oracle Cloud | 8,891 |
Amazon RDS | 10,577 |
6.総括
両クラウドの特性/注意点を総括として以下に示します。
Oracle Cloud | Amazon RDS | |
性能 | 物理I/Oが高速(IOPS保障なし) | 物理I/Oが低速(IOPS保障あり) |
価格 | 若干安い設定(過去の課金実績は確認不可) | 若干高い設定(過去の課金実績も確認可能) |
構成 | 設定の自由度は高いがDBを壊す可能性がある | DBを壊すことが出来ないように十分配慮されている |
保守 | マニュアルが分散しており、分かりづらい | マニュアルが纏まっており、分かりやすい |
運用 | 管理GUIの変更が頻繁で、煩雑な印象 | 管理GUIが洗練され、操作も確立されている |
本検証では、Oracle Cloudの性能/価格が共に良好な結果でありました。特にOracle Cloudはデータベース性能に直結する物理I/Oの性能が際立っており、Oracle社が謳う「オンプレミスの長所も兼ね備える」ことが確認される結果となりました。ただし、Amazon RDSはIOPSが保障されるのに対し、Oracle Cloudは保障されない為、将来的に性能が維持されるかは未知数であることを、十分考慮する必要がありそうです。
Amazon RDSは追加課金でIOPSの性能を向上させることもできますが、その分コストも高くなってしまうため、性能面で同等になったとしても価格面でOracle Cloudの方が優位となりますが、 本検証時に発生した各種問い合わせについて、Oracle Cloudは返答までに数ヶ月等、非常に時間を要する場合があることも、保守/運用面で考慮する必要があります。
※今回弊社では性能/価格を比較検証しましたが、性能/価格のみで安易にクラウド基盤を利用するのではなく、「アプリケーションとの親和性」「移行方式」「ネットワーク」「セキュリティー」「保守/運用」等を含め、総合的に基盤を選定することが重要と考えております。