システムのマイグレーションサービスとは

システム開発の基礎知識

システム開発の基礎知識

2017年、日本政府が情報システムを構築する際に、第一候補としてクラウドサービスの利用を検討する「クラウドバイデフォルト原則」(cloud by default)が閣議決定されました。
この流れは民間にも波及し、特にSaaSで提供される新サービスが加速しクラウドの選択肢は大幅に増えてきたと言えます。

一方で、長年愛用してきた業務システムを今後もまだまだ使い続けたいという企業も数多くあります。
オンプレミスからクラウドには移行済みという企業も多いものの、環境がクラウド化されただけで中長期視点のシステム運用の課題は、オンプレミス時代と大きく変わりません。

本記事では、システムの運用に携わっている方が必ず直面するシステムのマイグレーションについてご紹介します。

1. はじめに

システムを長年運用していると定期的に更改イベントが発生します。
更改イベントとはシステムを構成するさまざまなポイントが原因となり、何らかの対応を求められるものです。
日々進化を続けるIT技術の中でシステムだけが古いままでいることは許されず、半ば強制的に少しずつでもアップデートしなくてはなりません。

2. システムの更改はなぜ必要なのか

システムは、ハードウェアとソフトウェアによって構成されています。
さらにソフトウェアは開発言語、フレームワーク、その上ミドルウェアを含めるとその構成要素は多岐に渡ります。
これらが原因となりハードウェア的・技術的・運用的、またセキュリティ的な観点でシステムの更改が必要になります。

ハードウェア的要因

システムを構成するハードウェアは基本的に消耗品であり耐用年数を超える頃にはパフォーマンスが低下し故障のリスクも高まります。
メーカーの保守サービスに加入していれば当然、故障の際に部品の交換等に対応できるので問題はありません。
しかし、保守に必要な部品の確保など、サービスに限界があるため、一般的に保守サービスには提供期間が設定されており、いつか契約終了となる日が訪れます。

技術的要因

大昔のコンピュータシステムと違い、Webアプリケーションといえどもシステムを提供するサーバ側と利用するクライアント側という関係性が存在しています。
サーバ側は一貫して同じ条件でシステムを提供し続けたとしても、クライアント側はOSやブラウザ、ハードウェアの最新化によって環境が変化していきます。
そのため、システム提供を行うサーバ側もクライアントの変化に合わせて更新されていく必要があります。

また、最も大きな要因としてはOSのサポート期限が挙げられるでしょう。
機能豊富なOSには大小さまざまな不具合や脆弱性が連日のように発見されており、毎月修正パッチが提供されています。
システム担当者はその対応に日々奮闘していますが、OS提供メーカーもいつまでもパッチ提供を続けることはできないため、発売当時からサポート期間は設定されておりOS更改を計画的に進めるように促しています。

OS以外にもミドルウェアやフレームワーク、場合によっては開発言語のバージョンのサポート切れもあるため、変化が少なく長年使い続けることを目的とした業務システムでは長期計画が必要になります。

運用的要因

ハードウェア的・技術的要因に目をつむり、ちゃんと動いているから問題ないと放置をしていると運用的な問題が浮上してきます。
原因不明のパフォーマンス低下や、不具合発生時のサポートが受けられず問題が解決できないなど、ハードウェアが壊れて復旧出来ないだけでなく、さまざまなリスクに晒される事になります。

3. システム更改の種類

一言にシステム更改と言っても方法はいくつかあります。
予算・スケジュール・システムの利用状況に応じて、適切なタイミングで選択する必要があります。
判断を先延ばしにすることは選択肢を狭めることになるため、早い段階からの計画性が必要と言えるでしょう。

ハードウェア(インフラ)更改

システムを構成するハードウェアを刷新することを言います。
クラウドサービスでは基本的にハードウェアの老朽化を心配する必要はないため、オンプレミスの場合のみ考慮する必要があります。
一般的にハードウェア更改するケースでは、アプリケーションには手を加えないことを前提にする場合が多いです。
そのため、VMwareのような仮想化基盤での運用が一般的です。
OS等のサポート期間によってはAWSのようなパブリッククラウドに引っ越しをすることも可能です。

マイグレーション

システムを支えるソフトウェア環境(OS、ミドルウェア、データベースなど)をバージョンアップし、アプリケーションへの改修は最小限に留める方法です。
オンプレミスからパブリッククラウドへ引っ越しをする場合には、このマイグレーションを推奨しています。
環境を最新化することでパフォーマンスの向上、セキュリティの強化、最新環境での動作が約束されます。
注意点としては各ソフトウェアのバージョンアップ幅が大きければ大きいほど、変更箇所が多くアプリケーション動作への影響が大きくなるため、作業規模が膨れやすくなります。

システム刷新

既存のシステムを廃棄し、完全に新しく開発しなおす方法です。
当然ながら予算・工期共に最大の規模となることは間違いありません。
しかし、事業を支える基幹・業務システムは長年の運用で度重なる改修、古くなった開発言語、複雑化する業務フロー、そしてシステムを深く理解する人材の減少などにより一度リセットしたほうが良いと考えられる時期があります。
その際には、業務内容の棚卸を行いシステムの要件定義からやり直すことが良いとされるケースがあります。

4. マイグレーション支援サービス

システム更改の種類を説明しましたが、長年運用しているシステムに携わっていれば一番機会が多いのはマイグレーションです。
一般的には5~8年で繰り返されることが多いです。
基本的には開発ベンダーがマイグレーションを担当するケースが多いですが、さまざまな理由で対応することが困難な場合もあり、マイグレーション支援サービスを提供しているベンダーもあります。

5. おわりに

システムエグゼではクラウドワープというパブリッククラウドへのマイグレーション支援ソリューションを提供しています。
既存環境はオンプレミス・仮想化基盤・クラウド問わず、お客様のニーズに合わせたレイヤーでマイグレーションを支援しています。
また、モダナイゼーションについてもご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。