アジャイル開発におけるスプリントとは

システム開発の基礎知識

システム開発の基礎知識

システム開発やソフトウェア開発における開発手法のひとつであり、近年主流になっている「アジャイル開発」ですが、どのような手法なのでしょう?
本記事では、アジャイル開発の代表的なフレームワークである「スクラム」開発で用いられる「スプリント」について、わかりやすく解説します。

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1.アジャイル開発におけるスプリント カンバンとXPも解説

普段耳にする「スプリント」は陸上競技などの「短距離競走」をイメージすると思います。
では、アジャイル開発におけるスプリントとはどのような意味なのでしょう。
またスプリントと同様にアジャイル開発で使われる用語である「カンバン」と「XP」との違いも解説します。

スプリントの概要

スプリントとは、アジャイル開発フレームワークの「スクラム開発」で用いられる用語で、開発工程を短期間に区切った期間のことを指します。
スプリントは通常1〜4週間程度の区切られた作業期間で設定します。

スクラム開発では、このスプリントごとに、システムに必要な機能の設計・開発・テスト・リリースなどの工程を繰り返してプロジェクトを進めていきます。

スプリント、カンバン、XPの違い

アジャイル開発には「スクラム」の他に「カンバン」「XP(エクストリーム・プログラミング)」など複数の手法があります。
基本的な方針はどれも同じで、「短期間で機能を開発し、それを繰り返していく」という手法です。

スプリント、カンバン、XPでは、それぞれ定義や目的などが異なります。
3つの開発手法の違いを表にわかりやすくまとめると以下のようになります。

特徴 スプリント カンバン エクストリーム
プログラミング
定義 一定期間(通常2週間~1ヶ月)で完了させる開発サイクル タスクの進捗を可視化し、ワークフローを最適化する手法 ソフトウェア開発におけるベストプラクティス集
目的 短期間で成果物を出し、顧客フィードバックを迅速に反映させる 作業の透明性を高め、チームの効率性を向上させる 高品質なソフトウェアを迅速に開発する
特徴 スプリント計画、デイリースクラム、スプリントレビュー、スプリントレトロスペクティブなど、定型的なイベントがある WIP制限、継続的な改善、視覚化が特徴 ペアプログラミング、テスト駆動開発、リファクタリングなど、具体的なプラクティスが多数存在する
柔軟性 スプリント計画は柔軟に変更可能だが、スプリント期間中は固定 非常に柔軟で、タスクの追加や優先順位の変更が容易 変化に迅速に対応できるが、プラクティスを厳守することが求められる
チーム プロダクトオーナー、スクラムマスター、開発チームの役割が明確 特定の役割は定義されない チームメンバー全員が開発に関与する
適用範囲 幅広いソフトウェア開発プロジェクトに適用可能 さまざまな種類のプロジェクトに適用可能 小規模から中規模のプロジェクトに適している

次章それスプリントの進め方を5つのステップで解説します。

2. スプリントの進め方を5ステップで理解しよう

スプリントを効果的に進めるための一般的な手順は以下の5ステップです。
スプリントは、次に記載している5つのステップを繰り返し実行しながら進めます。
5つのステップの中でチームやプロジェクトの状況に合わせて、柔軟にカスタマイズすることができます。

1.スプリントプランニングを行う

・スプリントの開始時に、スプリントプランニングミーティングを行います。
・優先順位の高いバックログアイテムから実現可能な範囲を評価します。
・スプリントの目標を設定し、どのアイテムをスプリント内で完了させるかを決定します。

2.スプリント実行

・スプリント期間中(通常1〜4週間)、選定したバックログアイテムに取り組みます。
・毎日、デイリースクラム(スタンドアップミーティング)を行い、進捗状況や課題を共有します。

3.進捗の追跡

・タスクボードやバーンダウンチャートを使用して、進捗を可視化します。
・タスクの進捗状況を更新し、問題が発生した場合は早期に対処します。

4.スプリントレビューを行う

・スプリントの終了時に、スプリントレビューを行います。
・完了した作業をステークホルダーにデモし、フィードバックを受け取ります。
・次のスプリントに向けてバックログを更新します。

5.スプリントレトロスペクティブを行う

・スプリントレビューの後、レトロスペクティブ(振り返り)を行い、スプリントのプロセスを振り返ります。
・何がうまくいったか、何が改善できるかを話し合い、次のスプリントに向けた改善策を決定します。

スプリントの5ステップ

次章では、改めてスプリントのメリットと注意点についてあわせて紹介します。

3. メリットと注意点

スプリントは、効率的な開発を促進するための重要な手法ですが、メリットといくつかの注意点があります。
開発手法を選択する際のポイントにもなるため、慎重に検討しましょう。

メリット

  1. 迅速なフィードバック
    スプリントを短期間に設定することで、ユーザーやステークホルダーからのフィードバックを早期に得ることができます。
    これにより、開発の方向性を柔軟に調整できます。
  2. チームの協力
    デイリースクラムやスプリントレビューを通じて、チームメンバー間のコミュニケーションが活発になり、協力体制が強化されます。
  3. リスクの軽減
    短いサイクルで開発を進めることで、問題が早期に発見され、リスクを軽減することができます。
    大きな問題が発生する前に対処できるため、プロジェクト全体の成功率が向上します。
  4. 継続的な改善
    スプリントレトロスペクティブを通じて、チームは常に自分たちのプロセスを見直し、改善を図ることができます。
    これにより、効率的な開発が可能になります。

注意点

  1. スプリントの目標・範囲を明確にする
    チームのモチベーション維持や品質の保持のためにもスプリントの開始時に、達成すべき目標を明確に設定することが重要です。
    また、その目標達成に向け、適切な作業量を見極めることが重要です。
    過剰な作業量になってしまうと、チームが疲弊し、成果物の品質が低下する可能性があります。
  2. 適切なスプリントの長さを選ぶ
    スプリントの期間は一般的に1〜4週間ですが、チームの特性やプロジェクトの内容に応じて適切な長さを選ぶことが重要です。
    短すぎると十分な作業ができず、長すぎるとフィードバックが遅れ、柔軟性が失われる可能性があります。
  3. チームのコミュニケーションを重視する
    デイリースクラムやスプリントレビューなどのミーティングは、チームのコミュニケーションを促進するために重要です。
    これらのミーティングを軽視せず、積極的に参加し、情報を共有することが成功の鍵です。

4.まとめ

スクラム開発は柔軟性が高く、仕様変更にも対応しやすいですが、開発の進行状況を管理するスキルが求められるため、メンバー全員がアジャイルに精通している必要があります。

プロジェクトの性質を踏まえ、フレームワークとしてスクラムを適用するのか、またはXPやカンバンとするのか検討が必要でしょう。
状況に応じて、複数の手法を組み合わせるハイブリッドも有効なためプロジェクトの成功に向け、適切な開発手法の選定が重要です。

システムエグゼはさまざまな業種のお客様に対して、多くのシステム開発の開発実績があります。
商業施設管理の基幹システムを筆頭に、大規模プロジェクトの成功実績が多数ございます。

お客様のプロジェクト内容に応じて、スクラム開発はもちろんさまざまな開発手法の中から、最適な手法をご提案します。
システム開発をご検討の際には、システムエグゼへお気軽にご相談ください。