マイグレーションを安全に実現するためのステップを考えよう

システム開発の基礎知識

システム開発の基礎知識

現代の急速に進化する技術環境において、ビジネスは常に新しい技術への適応を求められています。
その一環として多くの企業が直面する課題が、既存のデータやアプリケーションを新しいプラットフォームや環境に移行する「システムマイグレーション」(以下、マイグレーション)です。
マイグレーションは企業の業務効率の向上やコスト削減、そして将来の技術的な優位性を確保するための重要なステップです。

しかしマイグレーションは単なる技術的な移行ではなく、戦略的なビジネス決定であり、多くの要素が成功に影響を及ぼします。
本記事では、企業が直面している課題からマイグレーションの目的を示し、成功させるためのステップやベストプラクティスを詳しく探ります。

1.マイグレーションとは? 意味、手法、種類を解説

マイグレーションとは「移転」や「移動」などを意味する言葉で、ITの分野では、現在使用しているシステム(OSやミドルウェアやソフトウェア)、データベース、ハードウェアなどを新しい環境に移すことを指します。
マイグレーションにより古いレガシーシステムを刷新することで、パフォーマンスの向上、コスト削減、サポートやセキュリティ面のリスクを回避できます。

マイグレーションにはいくつかの手法があります。
今回はその中で代表的なものを2つ解説します。

アプリケーションマイグレーション

アプリケーションを既存環境から別の環境へ移行するプロセスを指します。
ITの新しい技術・機能やサービスを利用するため、システム開発・改修に優れており、またアプリケーションの応答速度や処理能力を高める際に最適な手法です。

【アプリケーションマイグレーションの目的】

  • システムパフォーマンスの向上
  • 新機能やサービスの導入スピードUP
  • スケーラビリティの向上
  • セキュリティや安定性を維持

クラウドマイグレーション

企業や組織が自社のIT資源やデータ、アプリケーションをオンプレミス(自社内のサーバやデータセンター)からクラウドサービスプロバイダ(AWS、Microsoft Azure、Oracle Cloud等)の環境へ移行するプロセスを指します。
移行形態としては、既存システムをそのままクラウドに移行する「リフトアンドシフト」や一部の機能をクラウド側のサービスに置き換える「リプラットフォーム」などがあります。

【クラウドマイグレーションの目的】

  • 運用コストの最適化
  • パフォーマンスの向上
  • スケーラビリティの向上
  • 事業継続性と災害復旧
  • IT資源の管理負荷軽減
  • セキュリティや安定性を維持

2.レガシーシステムの課題・注意点を知ろう

マイグレーションを行う際に気をつけたいレガシーシステムの課題や注意点を3点解説します。

  1. データ互換性と品質
    データフォーマットが新システムと異なる場合、データ移行時にフォーマット変換やクレンジングが必要です。
    データ品質の低下を防ぐために移行後のデータを検証し、どのようにクレンジングを行うか計画する必要があります。
  2. 技術的制約
    古いプラットフォームや技術に依存しており、新技術との互換性に問題がある場合があります。
    必要に応じて、ラッピングやエミュレーション技術を用いて互換性を確保する方法を検討します。
  3. セキュリティリスク
    ミドルウェアやOSのサポート・保守が終了しているものが多々あり、新システムに移行する際にセキュリティ対策を見直す必要があります。

新システムへ移行する際は、アプリケーション、ミドルウェア、ハードウェアの観点でより安全安心にマイグレーションを行う必要があります。

3.マイグレーションを安全に進めるためのステップ5つ

マイグレーションを安全に進めるために、アプリケーションとインフラの視点から、5つのステップをご紹介します。

【アプリケーション】

1. 現行調査と計画

  • 現在のアプリケーションとインフラを調査し、依存関係を特定します。
  • 移行の範囲、目的、リソース、セキュリティ要件を定義し、詳細な移行計画を作成します。

2. リスク評価と移行計画の作成

  • 移行に伴う技術的、運用的リスクを洗い出し評価します。
  • リスクの軽減策や回避策を策定し、問題が発生した場合の対応を準備します。
  • タイムラインと具体的なタスクを含む詳細な移行計画を作成します。

3. PoC実施

  • 本番環境と同じテスト環境を用意し、移行プロセスをシミュレーションします。
  • 移行するデータの正確性と完全性をテストし、データ損失や破損がないかデータを検証します。
  • アプリケーションやシステムが新しい環境で正常に動作するかを確認し、問題があれば改修します。
  • マイグレーションのステップを細かく計画し、最終的な互換性、スケジュール、マイグレーションの目的を明確にします。

4. 本番移行の実施

  • 移行プロセスを実行し、段階的にシステムやサービスを一部ずつ移行することで、問題が発生した際の対応を容易にします。
  • 検出された問題はすぐに対応し、必要に応じて移行計画を調整します。

5. ハイパーケア

  • 移行後、アプリケーションの動作を詳細にテストし、機能とパフォーマンスを検証します。
  • 新しい環境でのパフォーマンスを監視し、必要に応じて最適化を行います。
  • ユーザーシナリオを確認し、ユーザー影響を最小限に抑えます。
  • 定期的にフィードバックを収集し、保守対応として継続的な改善を実施します。

【インフラ】

1. 現行調査と計画

  • クラウド移行のビジネス目標を明確にし、成功指標を定義します。
  • どのアプリケーションやデータを移行するかを決定し、適切なクラウドモデル(IaaS、PaaS、SaaS)を選択します。
  • データ保護要件やコンプライアンス規制を確認し、それに適合するクラウドプロバイダ(AWS、Microsoft Azure、Oracle Cloud等)を選定します。
  • クラウド環境に適したセキュリティ対策(例えば、データ暗号化、アクセス制御)の計画を立てます。

2. リスク評価と移行計画の作成

  • 移行に伴う技術的、運用的リスクを洗い出して評価します。
  • リスクの軽減策や回避策を策定し、問題が発生した場合の対応を準備します。
  • タイムラインと具体的なタスクを含む詳細な移行計画を作成します。

3. PoC実施

  • クラウド上にテスト環境を設定し、移行プロセスをシミュレーションします。
  • パフォーマンスやセキュリティのテストを実施し、問題点を特定・修正します。
  • マイグレーションのステップを細かく計画し、最終的な互換性、スケジュール、マイグレーションの目的を明確にします。

4. 本番移行の実施

  • 本番環境への移行を計画に基づいて実行し、進捗を詳細に監視します。
  • 必要に応じて計画を調整し、問題が発生した場合は迅速に対処します。

5. ハイパーケア

  • 全てのシステム機能が正常に動作していることを確認します。
  • ユーザーエクスペリエンスやパフォーマンスの面でも問題がないか検証します。
  • 運用開始後もクラウド環境を継続的に監視し、パフォーマンスの最適化を行います。

4.まとめ

マイグレーションは、現行システムの状況や、目的などにより、手法が異なってきます。
どのマイグレーションでも、計画の立て方からリスク管理、そして移行と運用保守まで、各ステップの重要性を理解することが成功への鍵となります。

企業によりマイグレーションにおける課題はさまざまです。
システムエグゼではアプリケーション、データベース、インフラにおいて専門の技術者が多数在籍しており、上流工程からお客様と一緒に課題を洗い出し、ワンストップで安心安全にマイグレーションを行うことができます。

また、100%子会社のシステムエグゼベトナム(オフショア開発)を活用することでマイグレーションに掛かるコストを抑えることも可能です。
既存システムの移行にお悩みなどございましたら、ぜひシステムエグゼへご相談ください。

BI_banner01.png