第2回:仮想化環境のバックアップについて ~1~

インフラのプロが語る!仮想化のススメ

皆さま、こんにちは。
株式会社システムエグゼ インフラソリューション部の土谷と申します。
立春が過ぎ、暦の上では春到来となりましたが、毎日寒い日が続きますね。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
インフルエンザなど蔓延しているようですので、予防対策をしっかりし、元気に頑張っていきましょう。

少し前の話ですが、東京の豊洲から自社にバスを利用して帰社する際、バスは異常なほどの混雑具合でした。
どうやら近くの東京ビッグサイトで大きなイベントがあったらしく、その帰り客が利用するバスと時間帯がかぶってしまったようでした。
それでも何とか私はバスに乗り込み、事なきを得たのですが、バスは既に満員状態で、一人の乗客すらも乗れるようなスペースはありませんでした。

ここで一つ発見がありました。
満員状態になったバスは、途中のバス停に乗客が待っていても、どんなに外が寒かろうと、オフト監督の直伝のアイコンタクトを運転手に送ったとしても、 バスは無情にもバス停を通過しちゃうんですね。
私が乗り込んだバスは、普通にバス停を通過し、途中で降りる乗客が出てくるまでノンストップ走行していました。
バスがバス停を通過し激走する姿って、私は映画「スピード」くらいでしか見た事が無く、満員バスの中、私は一人でテンションが上がっていました。

勝手な想像ですが、バス会社側のセオリーとして、このような事態に対する「バックアッププラン」が予め用意されていて、 それが、「乗客が降りるまで、追加では乗せない」ということだったのかと考えさせられました。
というわけで、前置きが長くなりましたが、今月は「バックアップ」についてお話したいと思います。

バックアップ計画の必要性について

新しくITシステムを導入されるお客さまで、仮想化環境を選定される際、必ずと言って良いほどセットで考えなければならないものがあります。
その一つが「バックアップ」です。仮想化環境は1つのサーバに複数のシステムを集約する性質上、万一、当該サーバが失われてしまった場合は、 一度に複数のシステムを失う事に繋がります。そのため、仮想化環境への集約率が高ければ高いほど、その業務的な損失額は計りしれないものとなっていきます。
こうした損失リスクに対する有効な備えが「バックアッププラン」になります。
バックアッププランを策定していく上では、想定される様々な障害パターン(オペレーションミス等によるデータ損失、ハードウェア筺体障害、 サーバ設置先建物の倒壊・・・など)から、どのようにシステムを保護し、有事の際のMTTR(※1)を最小化できるかがポイントになります。

※1 MTTR : Mean Time To Repair(平均復旧時間)

仮想化環境におけるバックアップ方式の種類

仮想化環境におけるバックアップは、選定される仮想化製品にも依存しますが、概ね以下のカテゴリに分類することができます。

(1) ゲストOSにバックアップソフト用のエージェント(クライアント)を導入し、エージェント経由で個別にバックアップを取る
(2) 仮想化製品機能で持つ「スナップショット」機能とバックアップ製品を連携させたバックアップ
(3) 外部ストレージ装置のディスクコピー機能を利用したバックアップ

1) については、物理サーバ環境での一般的なバックアップ方式と何ら変わりはなく、仮想環境とはいえ、 バックアップとしての運用上のルール変更が最も少ないという意味で、利用者側に抵抗なく利用できる方式です。
バックアップ製品のオプションと組み合わせれば、物理サーバ環境での使用感同様に、データベースや、アプリケーションレベルで 整合性の取れたオンラインバックアップを容易に取ることができます。

但し、バックアップ製品にもよりますが、バックアップ対象のゲストOS毎にエージェントを準備する必要があり、 コスト的な部分と導入の手間はデメリットであるかと考えられます。
また、基本的にはネットワーク経由でのバックアップとなり、バックアップ時にはネットワーク帯域を多く消費することから、 バックアップ用の専用ネットワークセグメントを用意しておくケースが多いです。

2) については主にはVMwareやHyper-vなどで実現されていますが、仮想化製品で持つスナップショット機能を使用し、 ゲストOS上で一時的な「静止点」を作り、作成した「静止点」をバックアップするという2段階で動作します。
上記の方法により、ゲストOSがオンライン中であってもバックアップ取得が可能となります。
また、1)の方式と異なり、ゲストOS側にエージェントソフトを導入せずとも、1サーバあたりのゲストOSの数に関係なく、 オンラインでかつ(※2)、同じ方式でバックアップを取ることが可能となります。
本方式の詳細は次回のコラムでも触れたいと思いますが、某社独自の調べでは、仮想環境におけるバックアップは、 本方式が最も普及しているバックアップ方式であるそうです。

※2 Windows Server 2000 以前のWindows Server OSはオフラインバックアップになります

3)の方式につきましては、以下の条件を揃えておくことが前提です。

(1) 外部ストレージ装置上にゲストOSの構成ファイルを配置しておくこと
(2) 外部ストレージ装置のボリュームバックアップ・リストアのライセンス(製品によって呼び名はそれぞれですが…)を用意しておくこと


外部ストレージ装置の製品毎に方式が異なってくる部分もありますが、一般的には外部ストレージ装置のLUN(ボリューム)単位で 高速コピーを行うという動きでバックアップを実現させます。

この方式は大容量データを瞬時にバックアップ・リストアができるという利便性があり、中~大規模システム向けのバックアップ方式であると言えます。
更には、複数の外部ストレージ装置間同士での遠隔コピー機能(製品によって呼び名はそれぞれですが…)と組み合わせることで、 DR(災対)サイトでのゲストOSバックアップデータ転送、復旧…といった形を実現させることも可能となります。
追加のライセンス費用や実装工数などで、一般的にはコストが多く掛かってしまうケースが多いですが、 大規模なミッションクリティカルシステムにおいては欠かせないバックアップ方式であると考えられます。

基本的には、お客さまのシステム利用環境のバックアップ要件に応じて、上述の何れかの方式を取る形になるかと思います。
また、要件によっては、複数の方式を組み合わせて実装させる…といったケースも考えられます。

次回は、VMware環境下でのバックアップ方式に焦点を絞り、仮想化環境バックアップについて、もう少し掘り下げてみたいと思います。