第39回:SharePlexライセンスの考え方

技術者向け・データベースの技術情報発信
SharePlex(シェアプレックス)は、クエストソフトウェア社が提供するデータベースレプリケーションソフトウェアです。
Oracle DatabaseやPostgreSQLなどのデータベースを複製(レプリケーション)して、さまざまなプラットフォーム間で移行や統合を行うことができます。
今回は、Oracle Database間におけるSharePlexのライセンスの考え方について解説します。
※2024年11月時点の情報です。最新情報については、クエストソフトウェア社またはSharePlexパートナーであるシステムエグゼまでお問い合わせください。
1.SharePlexライセンスの概要
SharePlexライセンスの考え方と、ライセンスに含まれているものについて解説します。
ライセンスの考え方
基本的にSharePlexが稼働する全てのサーバにライセンスが必要となります。
そのため、ほとんどの構成では、レプリケーションの転送元および転送先の双方にライセンスが必要となります。
各サーバで必要なライセンス見積は、ライセンス型番とライセンス数から算出します。
特別な考慮が必要な環境については後述します。

ライセンスに含まれているもの
標準サポート
SharePlexのライセンス形態には、永久ライセンスと期間ライセンスが選択できます。
永久ライセンスには標準サポートレベルの初年度保守費用が含まれており、期間ライセンスは当該期間における標準サポートレベルの初年度保守費用が含まれています。
標準サポートレベルでは、最新のソフトウェアアップグレード、ナレッジへのアクセスやオンラインサービスリクエストが利用できます。
SharePlex Manager
GUIにより各種のモニタリングが可能な SharePlex Managerが含まれています。
- 豊富な SharePlex のプロセス、ログ等のモニタリング機能
- 標準設定された閾値によるエラーの通知、メール送付機能
- 複数のレプリケーションストリームを一括で監視管理
Compare/Repair機能
ライセンスには、データの同期状態を確認するCompare機能と、非同期状態を修復するRepair機能が標準搭載されています。
Compare機能が無いレプリケーション製品の場合には、ソースデータベースが稼働中のため、トランザクションが無い時間帯の比較が必要になるとともに、データ量に応じてチェックに膨大な時間と工数がかかります。
SharePlexであれば、レプリケーションを実行しながら確認することができるため、特に移行用途では時間と工数を削減することができます。
また、Compare機能で非同期状態があった場合には、Repair機能を使用することで、軽微なデータの非同期状態の修正をすることができます。
SharePlexは論理レプリケーションソフトウェアの中で、唯一Repair機能が実装されています。

2.SharePlexライセンスの種類
SharePlexライセンスの型番は、導入する環境の情報などの要素から決まります。
SharePlexでレプリケーションするデータベースの種類によってもライセンスが異なりますが、今回はOracle Database前提でライセンスの種類をご紹介します。
稼働環境
SharePlexが稼働するサーバの稼働環境を選択します。
物理環境
- ハードウェアに仮想化技術等を使用せずに、直接OSをインストールし、データベースおよびSharePlexを導入する
※ハードウェア分割も含む
仮想/クラウド環境
- ハードウェアをVMwareやHyper-vなどのソフトウェアによる仮想化技術により分割し、分割されたリソースに対してOS、データベースおよびSharePlexを導入する
- Oracle Databaseの動作が認定された各種クラウド環境でSharePlexを導入する
OS
SharePlexが稼働するサーバのOSを選択します。
UNIX/Linux
- Linux
- Solaris
- AIX
- HP-UX
Windows
- Windows Server OS全般
- Windows用には専用のサードパーティ製ライセンスが組込み
On the Windows platform, SharePlex installs the MKS Toolkit® operating environment from Parametric Technology Corporation (PTC), formerly known as Mortice Kern Systems NuTCRACKER. This software enables SharePlex to be ported to all supported platforms in a uniform manner. Quest has an OEM agreement with PTC to use MKS Toolkit and there is no charge for this to SharePlex customers outside of the SharePlex license.
引用:“SharePlex 11.0 – SharePlex Release NotesSharePlex Release Notes – Third Party Contributions in this Release – MKS Toolkit and NuTCRACKER 10.2”.Quest.https://support.quest.com/technical-documents/shareplex/11.0/shareplex-release-notes/3#TOPIC-1935134,(2024-11).
Oracle Databaseエディション
Oracle Databaseのエディションに適合したSharePlexのエディションを選択します。
SHAREPLEX FOR ORACLE ENTERPRISE EDITION
- Oracle Database Enterprise Edition
SHAREPLEX FOR ORACLE STANDARD EDITION
- Oracle Database Standard Edition 2
- Oracle Database Standard Edition One (12.1.0.1まで)
- Oracle Database Standard Edition (12.1.0.1まで)
永久ライセンスと期間ライセンス
継続的な利用のための永久ライセンスのほかに、移行や短期間テストのための期間ライセンスがあります。
ケースによっては期間ライセンスの利用によりコスト削減することができます。

これらの要素で、ライセンスの型番が決まります。
各型番の価格に対して後述の必要なライセンスカウントを掛け合わせることで各サーバのSharePlexライセンスを算出できます。
3.物理環境SharePlexライセンスカウント
物理環境でSharePlexを稼働させるために必要なライセンスカウントについて解説します。
パーティショニング方式がハードウェア分割の場合には、物理環境のライセンスカウントが適用されます。
Oracle Database用ライセンスの仕組み
物理的なハードウェアに搭載されているCPUコア数またはCPU ソケット数をカウントします。
Oracle DatabaseのエディションとOSによって異なり、同じハードウェア構成でもカウントが異なります。

仮想環境(ハードウェア分割)の場合
Oracle Database Enterprise Editionを使用時に、ハードウェアから特定のCPUリソースを占有して割り当てる方式の技術を使用している場合には、切り出されたリソース分のCPU数に基づいて物理環境用のライセンスが利用可能です。
Oracle Standard Edition使用時のライセンスについては、個別にお問い合わせください。
ホストOSで管理されたCPUリソースが各仮想マシンで専有される形で割り当てられる方式の場合
- LPAR
- nPar
- Oracle Solaris ゾーン(Solaris Container) 制限設定時
- Oracle VM(Hardware Partitioning設定時)
- Oracle Database Appliance
4.仮想/クラウド環境SharePlexライセンスカウント
次に仮想/クラウド環境でSharePlexを稼働させるために必要なライセンスカウントについて解説します。
ハードウェア分割の場合には、物理環境ライセンスが適用されますが、ソフトウェア分割の場合には仮想/クラウド環境ライセンスが適用されます。
仮想環境(ソフトウェア分割)の場合
ハードウェアから特定のCPUリソースをソフトウェア技術により共用している場合には、割り当てたvCPU数に基づいたライセンスが必要になります。
オラクル社が採用しているホストベースのライセンスではなく、各VMのOSごとに割り当てられたvCPU数に基づいてライセンス計算が行われます。
vCPUは仮想ソケット数ではなく、仮想コア数によって計算が必要で、特にStandard Editionでは物理環境と計算が異なるため注意が必要です。
ホストOSで管理されたCPUリソースが仮想マシンに対して、動的に割り当てられる方式の場合
- VMware vSphere
- Microsoft Hyper-V
- Xen
- KVM
- Oracle VM(Hardware Partitioning未設定時)
クラウド環境の場合
Oracle Databaseの稼働が認められたクラウド環境では、割り当てられたvCPU数に応じたライセンスが必要になります。
- Amazon EC2
インスタンスごとに定義されているvCPUによりライセンスが決定されます(CPUコア数は使用されません) - Amazon RDS
インスタンスごとに定義されているvCPUによりライセンスが決定されます(コアカウントは使用されません) - Microsoft Azure Virtual Machines
インスタンスごとに定義されているvCPUによりライセンスが決定されます。
インスタンスによっては単位がコアとして表示されているものがありますので、個別にお問い合わせください。 - Oracle Cloud Infrastructure Compute/Oracle Base Database Service
インスタンスごとに定義されているOCPUによりライセンスが決定されます。
Oracle Cloudでは1OCPUを2vCPUと定義しているため、2vCPUの単位でライセンスが決定されます。
5.特別な考慮が必要なSharePlex導入環境
このほか、特別な考慮が必要なSharePlex導入環境として、「Oracle RAC構成」「HA構成」「Amazon RDS環境」があります。
これら以外にも構成によっては考慮が必要となるケースがあるため、クエストソフトウェア社またはSharePlexパートナーであるシステムエグゼまでお問い合わせください。
Oracle Real Application Clusters(RAC)構成
Oracle RAC構成の場合には、全てのノードのCPUに対応したライセンスが必要になります。

HA構成
Active-StandbyのHAクラスタ構成の場合には、Standby側の年間稼働日数によって、ライセンスカウントが異なります。

Amazon RDS環境
Amazon RDSのようにデータベースサーバのOSにログインできず、データベースが稼働するOS上にSharePlexを導入できない場合には、リモートレプリケーションサーバ方式を利用します。
リモートレプリケーションサーバにデータベースのクライアントとSharePlexを導入することで、データベース間をレプリケーションします。
この場合のライセンスの考え方は、通常の移行元と移行先のSharePlexライセンスに加えて、レプリケーションサーバライセンスが必要になります。
レプリケーションサーバライセンスは、リモートレプリケーションサーバのスペックに関わらずリモートレプリケーションサーバの台数分が必要になります。
また、リモートレプリケーションサーバはUnix/Linuxで用意されているため、Windowsを使用している場合には別途お問い合わせください。

6.SharePlexライセンスの注意事項
SharePlexライセンスについて、これまでにお客様からお問い合わせいただいた質問を注意事項としてご紹介します。
逆同期構成のライセンスについて
SharePlexを移行用途で利用する場合に、本番切り替え後に切り戻し用として逆同期を構成する場合があります。
SharePlexのライセンスは、順同期も逆同期も関係なく、稼働するサーバに対してカウントされるため、逆同期に別途ライセンス追加は不要です。
移行時のライセンスをそのまま逆同期に利用することができます。
同様の考え方で、すでにSharePlexでレプリケーションしている環境に対して、レプリケーション先を追加する場合には、追加するサーバに対してのみ別途ライセンスが必要になります。
Oracle Databaseの異なるエディション間におけるライセンス流用について
Oracle DatabaseがStandard Editionの環境でSharePlexのEnterprise Editionを使用することは可能ですが、CPU単位の課金で条件を満たす必要があります。
SharePlexのStandard EditionをOracle DatabaseのEnterprise Edition環境で使用することはできません。
OSの変更について
ご購入後の使用OSの変更はUnix/Linux用ライセンスについては対応可能ですが、Windowsへの変更はできません。
Windows用ライセンスは、Windows OS内のみ変更可能です。
物理と仮想/クラウド用ライセンス間の変更について
ライセンスのカウント方法が異なるため、基本的には変更できません。
SharePlex導入後に、OS等は変更せずにオンプレミスからクラウド、物理から仮想等への移行に伴って変更する計画がある場合には個別にご相談ください。
SharePlex稼働サーバのCPU数の変更について
CPUを追加する際に、必要なSharePlexライセンス数が不足している場合には、SharePlexライセンスの追加購入が必要になります。
古いOracle Databaseバージョンへの対応について
SharePlexの現在サポートされている最も古いバージョンは2024年11月現在、10.0となっています。
SharePlex 10.0では、ソース/ターゲットどちらもサポートされているOracle Databaseのバージョンは、11gR2, 12cR1, 12cR2, 18c, 19c EE & SE2となっています。
SharePlex 10.0よりも前のバージョンに対してのサポートは終了しているため、Oracle Database 11gR2以前のバージョンをサポート対象とするSharePlexバージョンはありません。
期間ライセンスと永続ライセンスの同一サーバでの併用について
期間ライセンスと永続ライセンスは異種ライセンスのため、マージして同一サーバに割り当てすることはできません。
SharePlex11.0からのライセンス仕様の変更
SharePlex11.0から従来のライセンスキーとはまったく互換がないライセンスキーへと変更されました。
SharePlex10.xまでのバージョンからのSharePlex11.0以降へのアップグレードの際には、事前にクエストソフトウェア社のサポートポータルからリクエスト申請をしてSharePlex11.xのライセンスキーを入手してからアップグレード作業を実行する必要があります。
7.おわりに
システムエグゼでは、SharePlexパートナーとして、SharePlexに関わるさまざまなサポートを提供しています。
ライセンスのカウント方法について、明確な判断ができない場合には、下記の情報を添えてシステムエグゼまでお気軽にお問い合わせください。
- 稼働環境
・物理環境
・仮想環境(ハードウェア分割 or ソフトウェア分割)
・クラウド環境 - OS(UNIX/Linux or Windows)
- Oracle Databaseのエディション(Enterprise or Standard)
- ライセンス形態(永久 or 期間)
- CPU(コア数 / ソケット数 / vCPU数)
- システム構成(Oracle RAC構成 / HA構成 / DBaaSなど)