第5回:小さく始めて大きく育てる

RPA導入の勘所
皆様こんにちは。新ビジネス推進室の國元です。
前回のコラムでは、RPA製品の導入に際してありがちな失敗例をお伝えしました。これをご覧になってRPA導入には高いハードルがありそうだと感じた方もいらっしゃるかもしれませんが、成功する秘訣があります。それが、当社がおすすめする、
「小さく始めて大きく育てていく」
というやり方です。
社内で体制を組む際にも、あからさまに業務改善や生産性向上を掲げて「コストを下げて利益を上げよう!」という進め方ではなく、ロボットを導入して業務を効率化するという「働き方改革」の一環として、削減できた工数を有効に使うための取り組みとするほうが、アサインされる方のモチベーションにも繋がるのではないでしょうか。
RPAの導入効果が実感できれば、色々な部署の方から協力が得やすくなりますので、手始めとして導入検証という形から入るのが良いのではないかと思います。大切なポイントは、最初から費用対効果や業務全体を把握しようと考えないことです。アサインされたメンバーがよく知っていて業務自動化しやすそうな、単純で処理のフローが少なく条件分岐もそれほど多くないものを、試しに一つ選んで自動化してみることから始めてみると良いと思います。
ほとんどのRPA製品には試用版ライセンスがあり、短期間なら無料で利用することができます。試用版ライセンスを利用して試験的に限定導入し、どの程度の時間が削減できるのかを実感することができれば、その後、導入範囲を拡大していく際にも「この業務を自動化したことでこれだけ時間が削減できました。今度はあなたの部署でこういう業務を自動化してみようと思うので業務をヒアリングさせてください!」というように、具体的な導入効果を挙げて協力を仰ぐことができます。
拡大導入の際も、全社に一斉展開するよりも、対象部署や業務を絞り込んで限定的な本格導入から始めると良いと思います。そうすることによって、導入効果がさらに実感できるのではないでしょうか。
メリット
- 働き方改革の取り組みの一環として残業時間の低減や余暇の充実を目標にすれば取り組みやすい
- 小さな体制・少ないコストで始められる
- 効果が実感でき、社内協力が得やすい
- 導入のしやすい業務から優先して取り組める
- RPA導入の社内ルールやロボット作成担当者の習熟に時間を掛けられる
- 導入効果の計測を短いサイクルで計測・検証できる
- 費用対効果が高い部署・業務へ順次拡大できる
RPA検証導入のポイント
それでは、検証導入を行う対象業務(対象部署)をどのように選定すればよいのでしょうか?

最初に把握しておかなければいけないのは
- どの部署の業務なのか
- どのような業務内容なのか
- どのようなシステムをどのような順序で操作し、どのような条件の場合はどう判断してどのように処理するか
- 業務の担当者は誰か(具体的なヒアリングの際に必要)
- どのようなシステムを操作するのか
- 業務の頻度/業務にかける時間(費用対効果算出のため)
といった点です。
このように項目を一覧にまとめたあとに、RPAに向いていそうな業務をピックアップします。RPAに向いていそうな業務の判断基準は、概ね以下の通りです。
- 正確性が必要な業務
- 操作をルール化できる業務(人の経験に頼るしかないものは自動化困難)
- 業務の変更が可能な業務(フローの順番、ルール変更)
もちろん、検証導入の際には、処理が単純で現在の所要時間がわかり自動化しやすい業務を選ぶほうが検証結果を出しやすいので、そのことも念頭に選定するとよいでしょう。
その後の本格導入では、システム化できない/できていないものを対象に、操作がフロー化できるものに利用範囲を広げていきます。
たとえば、システム化の要望が多く、システム化するためのコストが低いものであれば、RPAに頼るまでもなく別途システム化してしまったほうが費用対効果が大きいですし、システム化の要望があっても、単純にルール化できず高度な専門知識が必要な業務であれば、それをシステム化するためのコストが莫大かつルール化できないのでRPAでの自動化は困難です。
このことから、RPAに向く業務は「システム化の要望は少ないが、システム化のコストが高い(少量多品種)のもの」「システム化の費用対効果が低いので、システム化をあきらめていて手動で行っているもの」ということになります。

最終回となる次回のコラムでは、RPA製品の選定や導入後のポイントなどをご紹介いたします。