第4回:管理会計の製品群と特徴

管理会計システムの勘所

今年もよろしくお願いします!

2012年があっという間に過ぎ去って、新しい年になりましたね。
年々時間が経つのが早くなるといいますが、多分に漏れず私もひしひしと感じています。

前回コラム冒頭でも書いたように、昨年は(毎年?)、例年に増して忙しい年でしたが、今年も年明け早々4日から既にフル回転状態となっております。。。
これは内緒ですが、このコラムもその忙しい一因だったりしますね(笑)
ネタ仕込みから考えると、毎回2~3日くらいはかかっているので結構馬鹿にならないです。

そんな忙しい自慢は程々にして、今年も頑張って書きますので、多少でもお時間のある方は、是非、お付き合いください。

管理会計系製品の特長

さて、前回予告通り、今回は管理会計系製品の特長について、可能な範囲でポイントを記載していきたいと思います。
対象製品としては、当コラムの第1回目に挙げた以下の5つについて私なりの見解をご紹介します。
一つ一つの製品について全部のポイントを挙げようとすると、書けること・書きたいことが山ほどあるのですが、さすがにコラムで全部書くのは無理という事で、ある程度上澄みだけになってしまう点はご了承ください。

 ・Oracle Hyperion Essbase/Oracle Hyperion Planning
 ・SAP BusinessObjects Planning and Consolidation
 ・Infor PM
 ・BzPlan
 ・Adaptive Planning

Oracle Hyperion Essbase/Oracle Hyperion Planning

EssbaseとPlanningを一つの項目として扱うのは少々抵抗がなくも無いのですが、記事ボリュームの都合上纏めました。

この製品は1992年にArbor社(※)からリリースされた、「多次元データベース」という独特のアーキテクチャを持つ製品で、特に独自の計算スクリプト仕様を持つなど、管理会計系で融通の利く機能群を備えているのが特徴の製品です。
現在はバージョン11となり、大規模システム向けの機能充実性も高い製品となっています。
(※その後Hyperion社、2007年頃に、Oracle社のものとなりました)

Essbase自体はミドルウェア(データベース)で、BI製品としても十分な機能を備えており、 予算編成・管理会計に限らず、各種業務データの分析用途でも多数の企業が導入しています。
大手企業ならば既に導入されているところも多いのではないでしょうか。

そして、Essbaseの最大の特徴は、アドインとして提供される「Essbase SpreadSheet Add-in」によるExcelとの親和性と、データベースへのライトバック機能です。
このアドインは、元々の機能として持っているOLAP操作機能が特に優れている他、Excelのマクロ内にEssbaseとの接続制御やデータ送受信の操作を組み込む事が容易なため、ユーザインタフェースをカスタマイズして独自のものを作成しやすいという利点があります。
Excelアドインはいまでこそ珍しい機能ではありませんが、かなり初期の段階からこの機能を備え、今もほぼ変わらない形で持っているのが素直にスゴイところです。

Essbase自体のライセンスが少々高額なため、Essbase&Excel Add-inで構築されている企業が多いように思いますが、Essbaseデータベースをコアモジュールとして、Web経由での予算管理インタフェースを備えた Hyperion Planningと合わせて管理会計システムを構築されている企業もありますね。
大規模企業で導入されていることが多く、「Hyperion」というとこちらを指す企業さんをよく見かけます。
Planning自体は、Essbaseをエンジンとし、Webインタフェースでくるんだ、予算管理に特化した製品です。

SAP BusinessObjects Planning and Consolidation

この製品は、SAP R/3やBW(SAP社のBI製品)、及びMicrosoftのSQL Server Analysis Service(SSAS)をデータソースとして予算管理の仕組みを構築できる管理会計系製品です。

さすがにSAP社さんということで大規模企業の予算管理を想定した機能が組み込まれ、ビジネスフローや、連結機能まで備えています。
Essbase/Hyperion Planningでももちろん連結での予算管理は可能ですが、汎用性の高いEssbaseをコアとした場合、独自のビジネスロジックを組まなければならない等それなりに手間がかかる分、標準機能として備えているのは後発の強みというところでしょうか。

また、こちらは前述の製品同様ですが、多次元データを対象とした計算ロジックを実装できます。
ここで用いるのが、いわゆる「多次元データ」を扱うことのできる「MDX」という少々マニアックなスクリプトで、これはSSASやEssbaseでも使用できる言語ですね。
(この言語仕様は、MS社とHyperion社が策定したものです。)

尚、こちらも「BPC for Excel」という、Excelアドイン機能を持っています。
このユーザインタフェースがもつ多機能性は、先行しているEssbaseのアドイン機能とは別の方向性でなかなか優れているように思います。(とにかく豊富!)
デモンストレーション動画も公開されているようですので、ご興味のある方は探してみてはいかがでしょうか。

このところ弊社でも、案件として耳にすることが多くなって来ていますね。
導入事例も増えつつあるのではないでしょうか。要注目です。

Infor PM

日本語版の情報はあまり出ていないようですが、こちらも昨今の管理会計系製品の一角を担う製品のようです。
Web上では日本語ドキュメントがあまりありませんが、バージョンは10を数えていることや、ドキュメントを見る限り、英語版管理会計システムとして必要な機能は十分備わっています。

多次元データを扱えるという点では前述の2製品同様で、更に、Web/Excelのユーザインタフェースを備えている点でも遜色ないつくりになっています。
導入を検討される場合は、パフォーマンスや、バックエンドのロジック機能、データインタフェース機能について他の製品と比べてみるとよいでしょう。

また、この製品ならではの特徴としては、Excelインタフェースで、「表示されている数値」が算出されるまでに経由した計算の経緯をビジュアルでわかり易く表示する「Formula Map」の機能がある点でしょうか。

多次元データを扱うとき、基本的にはサマリデータを扱うことにはなるのですが、ビジネスロジックの要件上、たとえばある種の分析関数等を用いた場合、「どうやってその数字が出たのか」、というところが見えない、というケースが出て来ることがあります。
Essbase等では、データベース内での計算機能が強力な分、ロジックがバックエンドに隠蔽されてしまってどんな計算の結果を見ているのかが分かりづらくなります。 
その点ではこの機能は面白いのじゃないでしょうか。

また、承認ステータスのビジュアル化機能なんてのもあります。

更に、実際の使用にはカスタマイズが必要でしょうけれども、プリセットされたテンプレートもBS(貸借対照表)/PL(損益計算書)/CF(キャッシュフロー計算書)等それなりに揃っているようですね。
ちょっと独特な感じも受けますが、面白い製品なのではないでしょうか。

…ということで、大規模企業での予実管理・管理会計という点で十分な機能を持っているといえるのは上記の3製品ですが、加えて以下の二つはこれから更に進化していく余地のありそうなものになります。

BzPlan

そのものずばり予算管理(入力系)に特化した純和製の製品です。
分析機能部分はまだ揃っておらず、他社製品と組み合わせてのソリューション展開をされているようです。
以前、弊社内で手掛けたとあるプロジェクトでも、予実データのエントリーはBzPlan、アウトプット側・分析側はOracleBIで、という事例がありました。

中小規模の企業向けに展開してきている製品のようですが、大き目の企業でも徐々に導入事例が出てきているようです。
しかし、テンプレートの充実性や機能、きめ細かさという点ではまだこれからで、データボリュームが大きくなると少々工夫が必要、といった印象です。

BI部分が他社製品という点でも、これからレポーティング機能やバックエンドでの計算機能の充実を図っていって欲しいところですね。
導入企業が増えてニーズの取り込みが進むことを期待しましょう。

Adaptive Planning

こちらは海外製の予算管理パッケージで、昨今ちらほらと名前を聞くようになりました。
日本での導入事例はまだまだこれからというところですが、Webインタフェースがキレイなのが印象的です。
こちらも今時点では中小規模企業向けでしょうか。
海外では結構売れている、というような記事を見た事がありますね。

ただ、基本的にはWebベースなのですが、クライアント側で多くの計算が必要になるような大量のレコードを対象にした場合にちょっと弱いようです。
パフォーマンス対策がされたら化けるかもしれません。

全体としては…

大規模企業向けだと、やはりパフォーマンスが一番気になる所ですが、そこは高速なハードウェアの導入やミドルウェアのチューニング、ビジネスアプリケーションの構築方法である程度担保する必要があるのは共通です。

また、「業務ロジックに基づいたカスタム計算を定義することができる」、「WebインタフェースとExcelインタフェースの両方を備えている」というところがポイントですね。
あとの細かい機能は、業務ニーズとの適合性や、UIの好み、ライセンス体系との見合いで選択することになるでしょう。

ただ、この手の製品全般に言えるかもしれませんが、「ワークフロー機能」がまだ弱い感じです。
他のワークフロー製品とシームレスに連携できる機能が充実してくるとよいのですが、この辺りは今後の進化に期待しましょう。



…と今回はここまでです。
私自身調査ベースで書いている部分もあり、これから更なる研究が必要と考えていますので、上記は「今時点の中間レポート」というところですが、多少なりとも皆様の製品選定のお役に立てれば幸いです。
機会がまたあれば、研究資料をご提供することがあるかもしれません。

さて次回は、「管理会計とExcel」「管理会計システムの運用」というところからネタをピックアップしてお届けしたいと思います。