第1回:管理会計とシステム

管理会計システムの勘所

皆様、はじめまして。システムエグゼ 管理会計コンサルティング部の古川と申します。
当メルマガのコラムを、今月から6回に渡り担当させていただきます。
かれこれ10年程、管理会計のシステムやBI(Business Intelligence)製品でのシステム開発に携わってきた経験をベースに、いち「システム屋」としての観点から、管理会計システムの構築に関わる諸々を業界内外のお話も含めて綴ってみたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

管理会計とは

さて、まずは前段として「管理会計ってなんですか?」という方々向けに、少しこの言葉の概要に触れておきたいと思います。
日頃、管理会計に携わっておられる方々は、読み流していただければ。


管理会計とは何かを簡潔に表すと、「企業のパフォーマンスを測る内向きのモノサシ」といったところかと思います。

一般に、企業会計というと、「財務諸表」を想像する方も多いでしょう。
これらは会計期間(通常1年)中の取引や資産の内容を勘定科目毎に集約して、国や株主に報告するためのもので、「損益計算書」、「貸借対照表」「キャッシュフロー計算書」といったフォーマットが含まれます。経理で用いられる各種の取引伝票を記録したり、最終的にまとめて活動の結果や現在の資産を把握する、「財務会計」の領域です。
企業の視点からみると、活動の結果をアウトプットする、外向けの仕組みですね。

財務諸表では結果を見ることはできますが、それだけでは「どんなことをしてその会社が利益を得たのか」、といった詳しい内訳はわかりません。
今でこそ一年に4回(四半期に1度ずつ)報告されるようになっていますが、同じフォーマットで、時間の推移だけを見ても、「どうして儲かっているのか」は、IRレターやアニュアルレポート等外部向けに提供される補足情報を見ないとわからないことも多いですし、そもそもこれだけでは企業の内側の情報としては不十分です。
そこで企業の内側で、社内のお金の動き・状況を、様々な物差しで測るために用いられるのが「管理会計」の仕組み、内向きのモノサシです。

例えば、「どの部署が儲かっていて、どの部署でパフォーマンスが悪いのか。」といった情報を分析するには、サマリーレベルから「部署別」のデータへ視点を移して、その内訳を確認する必要がありますね。あるいは、「商品毎の売上を確認して、どれが売れているのかを見たい」、といった場合には、サマリーレベルから「商品別」のデータへ視点を移します。
こうした特定の区分でのくくりを「分析軸」と呼んだり「次元」と呼んだりします。

更に、結果としては「全社でどうなのか」という事と繋がっていなくてはならないので、色々な視点をシームレスに繋げ、スムーズに分析ができるということが求められてきます。
また、こうした分析は、PDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルとともに用いてこそ企業の内部をコントロールする役に立つので、必ず「予算管理」とセットになります。
こうした仕組みを実現するのに有効なのが「管理会計システムのソリューション」というわけです。

しかしながら、管理会計の仕組みを構築するとき、分析のための軸をいかに用意するかは、業種や業態によって様々、あるいは同業種でも「何を重視するか」によって変わってきます。
管理会計は法律で定められているものではないため、ある程度慣例やパターンはあるものの、標準がありません。
企業によって本当に様々なので、標準化がしづらく、汎用的な仕組みをカスタマイズして作られるのが当たり前、となっているのが現状です。


管理会計のソリューション

ではここで、昨今の管理会計システムの分野に、どういったソリューションが存在するかをご紹介していきましょう。

前述の通り、管理会計の仕組みは、結果に至るまでの中間、内訳を分析するものですが、データボリュームの観点からも、企業が小規模なうちはExcelやAccessで管理できますし、実際にそうしている企業もまだたくさんあります。
毎年のように起業される方々はおられますし、起業して間もない会社では、システム化までいかなくても、むしろ、ExcelやAccessでの管理で十分です。
企業向けの製品は高額なものも多く、それなりの投資が必要なので自然な事ですね。
(弊社でも私が入社した当時は、Excelで予実管理がなされていました。)

但し、これらのドキュメントベースの製品では、データが多くなればなるほど、管理が煩雑になり、企業が成長していくといずれ運用の限界を迎えます。

そこで出て来るのが、データベースとして情報を一元管理でき、Input機能やOutput機能を備えた、管理会計に適した製品群というわけです。その中でも、特に予算編成・管理会計機能に適したものを挙げると、例えば以下の製品群です。



・Oracle Hyperion Essbase/Oracle Hyperion Planning
・SAP BusinessObjects Planning and Consolidation
・Infor PM
・BzPlan
・Adaptive Planning

昨今、業界でシェアを持っている主なものは上記のような製品群ですが、他にも、DB製品を組み合わせたフルスクラッチのソリューションなどもあると思います。
あるいは、予算のInput自体は各種のERP製品上で行い、分析機能をBI製品で補完する例も数多く存在します。、ただ今回はあえて予算編成寄りにピックアップしてみました。

それぞれの機能・特徴についてまでは詳しくは触れませんが、例えばどのプログラミング言語であっても、目的が同じ以上類似機能を持っているように、製品は違えど予算管理・管理会計システムとして必要な基本機能は備えています。

また、価格帯による「機能充実度」の違いや「テンプレートの充実性」という差異もあるにはありますが、カスタマイズして使うことになるのはどの製品でも概ね一緒でしょう。
また、開発に当たっては、それらの使用について習熟し、業務要件との橋渡しをしっかりできる技術者がいるかどうかで導入の難易度も変わってきます。

弊社では、上記のうちでも高いシェアをもつEssbaseやHyperion Planningでの予算管理システム、管理会計システムを得意とし、数々の事例を蓄積していますので、このコラムでは、特に触れることが多くなると思います。
もちろん他の製品にも共通の考え方は多いと思いますので、これから各製品の導入をお考えの方に多少でも役に立つ「ネタ」が提供できたら幸いです。


次回は、予算編成のシステム構築について例を挙げて、私なりの勘所などをお伝えできればと思います。