RPAとは?そのメリットや導入方法を徹底解説

最新!導入経験者が語るRPAの勘所と活用方法

業務効率化や生産性向上のツールとして、近年高い注目を集めるRPA。
2020年においてもRPA導入率は増加傾向にあり、ニューノーマルの中で仕事のあり方を考える技術として更に注目されています。

このような注目度の高さから「RPA」という言葉を一度は耳にされた方も多いかと思われますが、実際にどのようなツールであるかをご存知ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、当コラムでは最新のRPA事情や、導入経験者のRPA活用方法などを連載形式でお届けしていきます。初回は、RPAのメリットや導入方法を徹底解説します。

RPAとは

RPAとは「Robotic Process Automation」の略称です。

「Robotic」という単語から、アンドロイドや産業用ロボットのような姿を連想される方もいらっしゃるかもしれませんが、RPAはそのような物理的なものではありません。

RPAは「ソフトウェアロボット」とも呼ばれ、定型的な事務作業を自動化してくれるものです。会計システムや人事システムなどのように、業務処理の「仕組み」を提供してくれるのではなく、「業務処理の流れを自動化」してくれるソフトウェアです。

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RPAができること

たとえば、会計システム内の情報を収集して分析レポートを作成する必要があった場合、RPA自体に収集や分析機能(業務処理の「仕組み」)があるわけではないので、分析レポートをRPA単体で作成することはできません。

RPAは人がマウスやキーボードで行っている収集や分析レポートの作業手順を「自動化」し、最終的に人が作成した分析レポートと同じ成果物を作成します。

ロボット

物理的・機械的なロボットではなく、ソフトウェアの仮想ロボットですが、人と同じく、パソコンやマウス、キーボード、ディスプレイ等を使用して業務を行います。

かつてブルーカラーが手作業で行っていた業務は、産業革命によって機械化され、生産性が大きく向上しました。近年ではRPAの登場によって、ホワイトカラーがPCで行う定型的な業務の生産性もまた、向上することが期待できます。このような観点からRPAは「ホワイトカラーのための産業用ロボット」とも呼べるのです。

RPAの導入率は?

株式会社MM総研のRPA国内利用動向調査では「企業のRPA導入率は38%、大手企業に限定すると51%に達した」とあり、2019年も導入率は増加傾向にあります。

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出典:MM総研「RPA国内利用動向調査2020」

RPAを導入する4つのメリット

株式会社MM総研のRPA国内利用動向調査では「導入済みの企業の56%はRPA導入に満足」とあり、満足度の高い理由は下記図のとおりとなっています。

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出典:MM総研「RPA国内利用動向調査2020」

RPAを導入することによって、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下にメリットを4つご紹介します。

1.生産性の向上

まず最初に挙げるメリットは「生産性の向上」です。

RPAを導入すると定型業務が自動化され、人が行うよりも早く正確に業務が行われるようになります。多くのRPA製品では、事前に業務開始時間をスケジュール登録することができるため、人とは違ってうっかり忘れてしまうことがありません。

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また、RPAがオフィス内の定型業務を代行してくれますので、外出先から業務を行うためだけに帰社する必要もなくなり、在宅勤務であってもRPAに指示することでオフィス勤務と同じ業務処理が行えます。

例えば、銀行等で特定の電子証明書が必要なシステムでも、RPAが実行することでアクセスが可能となります。

RPAによって、人はより付加価値の高い業務に専念することが可能となり、RPAが行う業務だけでなく、人が行う業務全体の生産性も大きく向上するのです。

2.人材不足の解消

次に挙げるメリットは「人材不足の解消」です。 少子高齢化に伴う労働人口の減少によって、近年日本では人材不足が深刻な社会問題となっています。

2015年時点で労働人口は7728万人でしたが、2017年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によると、2029年に7000万人、2040年に6000万人、2056年には5000万人を割り込むこと予想されているのです。

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そのため、どの企業でも人材不足は大きな課題と言えるでしょう。RPAに業務を代行してもらうことによって少ない従業員でも仕事ができるようになり、人材不足が解消するのです。

3.労働時間の短縮や人件費などのコスト削減

次に挙げるメリットは「労働時間の短縮や人件費などのコスト削減」です。RPAが代わりに業務を行うことによって、以前までその業務にかかっていた労働時間の短縮および人件費の削減が期待できます。

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もし定型業務が膨大にあり、それによって残業が発生しているという状況であれば、特に大きなコスト削減が見込めるでしょう。

4.ヒューマンエラーの防止

最後に挙げるメリットは「ヒューマンエラーの防止」です。人の集中力には限界があり、ミスが起こってしまうことは避けられないリスクです。

繰り返し行うような単純業務では特にそのようなミスが発生するケースが多く見られます。対して「ソフトウェアロボット」であるRPAには集中力の限界は無く、一定のクオリティで業務を行ってくれます。

よって、RPAの導入はヒューマンエラーの防止に繋がり、ヒューマンエラー発生時の損害や確認に伴うタイムロスなどを未然に防いでくれます。

失敗しないRPAの導入方法

上記でご紹介した通り、企業にさまざまなメリットをもたらしてくれるRPA。しかしメリットは理解していても導入方法が分からず、結果見送りになっているという企業も多いのではないでしょうか。
そこで、以下にRPAの導入方法を段階に分けてご説明します。

RPA導入に失敗した経験をお持ちの方や、既にRPAに取り組み中で活用範囲の拡大に向けた次のステップを検討されている方は、導入手順の見直しの参考にしていただけますと幸いです。

1.導入前に業務課題を明確にする

まず最初にご紹介するのは「導入前に課題や目的を明確にする」です。RPAはどのような業務でも行ってくれるツールではなく、あらかじめどのような業務を代行させるか決定しなくてはなりません。

そのため、導入前に企業が抱える業務課題を明確にすることが必要となります。 業務課題を洗い出し、その中でRPAに代行させることができる業務とそうでない業務を整理するのです。

RPAに向いている業務の特徴
  • 決められた手順で繰り返し行う定型業務
  • 決められた時刻に作業を行う必要のある定型業務
  • 業務手順が整理され、文書化されている業務
  • 複数のアプリケーションを跨がる処理
  • データの収集や集計
RPAに向いていない業務の特徴
  • 人の判断を必要とする業務
  • 画面レイアウト等の仕様の変更頻度が多いアプリケーションを操作する業務
  • 業務や運用ルールの変更頻度が多い業務

洗い出した業務課題の中で、上記のようなRPAに向いている業務の特徴を持つものがあれば、RPAの導入によって業務効率の改善を見込めるでしょう。

2.導入は小さく始める

次にご紹介するのは「導入は小さく始める」です。

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導入において最も重要となるのが、この段階です。なぜならRPAの導入が失敗してしまうケースにおいて多いのが、「全社的に大々的に取り組もうとする」ことが挙げられるためです。

これまで述べてきたように、RPAは業務効率改善や生産性の向上といった恩恵を企業にもたらします。しかし、洗い出しによって見えてきた業務課題を全て解決しようとすると、「全ての部署から協力を得られない」「業務マニュアルがないため始め方がわからない」「取り組みを行うための予算や人材が足りない」といった事態に陥りやすいのです。

このような事態を防ぐために、RPAを導入する際には「低コスト・短期間」で試験的に導入することから始めるのが良いでしょう。まずは業務フローが少ない単純作業にRPAを導入し、その効果を実感することで以降のRPA導入が円滑に進むようになります。また大抵のRPA製品には試用版ライセンスがあり、短期間であれば無料で利用することが可能であるため、コストもかからず始めることが可能です。

メリット
  • 働き方改革の取り組みの一環として残業時間の低減や余暇の充実を目標にすれば取り組みやすい
  • 小さな体制・少ないコストで始められる
  • 効果が実感でき、社内協力が得やすい
  • 導入のしやすい業務から優先して取り組める
  • RPA導入の社内ルールやロボット作成担当者の習熟に時間を掛けられる
  • 導入効果の計測を短いサイクルで計測・検証できる
  • 費用対効果が高い部署・業務へ順次拡大できる

3.社内全体でRPAの運用を定着させる

最後にご紹介するのは「社内全体でRPAの運用を定着させる」です。試験的にRPAを導入しその効果を実感できた後は、社内全体でRPAを導入していきます。

上記でも触れたように「他部署から協力が得られない」ということが、RPAの導入が失敗に終わる理由の一つとして挙げられます。しかし、効果を実感出来た後は具体的なメリットを挙げて協力を求めることができるため、RPA導入がスムーズに進みやすくなるのです。

また、全社的に一斉展開するのではなく、部署や業務を絞って導入していくとより円滑に進むようになるでしょう。

社内展開への事前準備
  • 相談専用窓口の設置や、要望アンケート等の社内展開を推進するための仕組み作り
  • 開発や運用ルールの整備(開発マニュアル、運用マニュアル、ロボット管理台帳等の作成)
  • 開発希望や権限関連で必要となる各種申請書の準備
  • RPAに興味がある方のためにRPAの説明資料を作成
  • RPAの効果や、RPAが実際に動いている動画等、社内への訴求動画作成 ・・・ etc.

注目のRPA製品をご紹介

現在RPAの導入を検討している方の中には、RPA製品には実際どういったものがあるのか?という疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

株式会社MM総研のRPA国内利用動向調査では、企業内でのRPA展開度合を測る指標として、部門数、PC台数、従業員数などで測定した「浸透率」を使用し、各RPA導入企業が設置している部門数を分母、RPAを利用している部門を分子として計算しています。

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出典:MM総研「RPA国内利用動向調査2020」

以下に、お勧めするRPA製品を4つご紹介します。

BizRobo!

BizRobo!(ビズロボ)は米Kofax社のRPAツール「Kofax Kapow」の日本語版OEM製品です。国内で1,560社以上の導入実績があり、国内実績No.1サービスとして高い評価を得ています。豊富な実績に基づいたロボット管理者向け、またはロボット作成者向けのトレーニングサービスが用意されており、RPAを初めて導入する企業に心強い存在となっています。

AutomationAnywhere

AutomationAnywhere(オートメーションエニウェア)は2003年創業で歴史のある会社であり、RPA業界のリーダーとして認識されている「Automation Anywhere」「Blue Prism」「Basic Robo」の世界三大RPA製品のうちの一つです。導入実績は世界3,100社を超えており、米国のシェアはNo.1を誇ります。2018年1月より日本法人を設立したほか、完全日本語化を実現しています。エンタープライズ型RPA製品として、高度なセキュリティ機能があり、大規模導入や複雑な業務の自動化に最適なRPAです。これから新規にRPA導入を検討される場合や、既にRPAに取り組み中で活用範囲の拡大に向けた次のステップを検討される場合でも、フェーズや規模を問わず、様々な場面でご期待に応えるRPAの本命とも言える製品です。

WinActor

WinActor(ウィンアクター)は2010年にNTTアドバンステクノロジ株式会社が開発したRPA製品です。 導入実績は4,800社を超えており、国内市場でNo.1のシェアを誇ります。Windows上で操作可能なアプリケーション全般に対応しており、適用範囲は非常に幅広いです。またRPA製品は海外のものが多く、トラブル時には英語の資料を読む必要がありますが、WinActorは純国産RPAのため、日本語マニュアルが完備されています。加えて全国の代理店企業が導入支援を行っており、サポートサービスを安心して受けられるのも人気のポイントです。

UiPath

UiPath(ユーアイパス)は高い技術力で業界をリードする米UiPath社が開発したRPA製品です。 RPA業界のリーダーとして認識されている「Automation Anywhere」「Blue Prism」「Basic Robo」の世界三大RPA製品のうちの一つです。2017年より日本法人を設立したほか、2018年10月には完全日本語化を実現しています。動作シナリオの作成、実行、管理支援などの機能群をモジュール化し、別々の製品として提供することで、小規模から大規模まで幅広く対応でき、「小さく始めて大きく育てる」RPAソリューションとなっています。

製品選定のポイント

RPA製品には、それぞれ向き不向きがあり価格も異なりますが、一般的な選定ポイントは以下の3つに絞り込めると思います。

自動操作可能なアプリケーションの種類

最初に挙げるポイントは、自動操作できるアプリケーションの種類についてです。これは、各製品で使用されている技術の違いにより、どのような種類のアプリケーションの操作が、どこまでできるかに違いがあるためです。

ブラウザの操作しか自動化できない製品からWindowsアプリケーションやVDI経由での操作が可能な、高度な認識技術が採用されている製品まで多岐にわたり、それぞれ強みがありますが、長い目で見て費用対効果を出すためには自社がメインで利用している業務アプリケーションを自動操作できるかどうかは重要なポイントでしょう。

管理機能の有無、野良ロボットの抑止

次に、セキュリティに関わる選定ポイントとして管理機能の有無が挙げられます。

たとえば、ExcelやAccessで複雑なシステムを組んでしまい、その後、そのシステム作成者が退職するなどして今は誰もメンテナンスできない状態だが、大切なデータがたくさん入っているために捨てることもできない、という問題を聞いたことはありませんか?

RPA製品も人が設定して自動化するという点ではそれと似ています。RPA製品の場合、管理サーバー以外に個人PC上でも動かせてしまうので、いわゆる「野良ロボット」がどんどん増えてしまい収拾がつかなくなるというリスクが存在するのです。

それらを一元管理するための「管理機能」は、野良ロボット抑止やメンテナンス性という観点からも不可欠です。管理機能は製品に搭載されているものと、その製品の姉妹製品を追加購入するものがありますので、導入検討の際は管理機能を含めたランニングコストで考えると良いのではないでしょうか。

日本語版ドキュメントの有無

最後に挙げるのは日本語のドキュメントやノウハウについてです。RPA製品は海外製のものが大多数を占め、製品マニュアルやノウハウ資料も英語のものが多いです。

自社で導入して拡大していくことや、ベンダーに依頼して導入を進めていくことを考えれば、日本語のドキュメントが多いほうが当然のことながら導入の難易度が下がります。また、グローバル展開されている企業で国産RPAを導入する場合は、日本語及び英語のドキュメント両方が提供されることが望ましいです。

製品選定以外に重要なこと

RPAが、PCの操作を教え込ませて自動処理させるソフトウェアのロボットであることはすでにご説明しましたが、それはすなわち、操作を覚えさせて正しく動作してはじめて効果が得られるということを意味します。

したがってRPA製品は、購入してインストールすればそれで終わりではありません。導入した製品を業務に有効活用していくためには、自社内の環境構築や運用体制も重要です。製品の選定前後の留意点を以下に挙げてみたいと思います。

環境構築

必要なコンピュータ環境

RPA製品によって異なる動作環境(OS・ミドルウェア・CPU・メモリ・ディスク容量)やネットワーク通信条件、ロボットの配置(クライアントPC上で実行/管理サーバー上で実行)、自動化業務の数に応じた必要リソース(CPU・メモリ)、サーバーの二重化等を考慮する必要があります。

管理機能の必要性

複雑な計算式やマクロを含んだExcelと同様に、管理されないロボット(野良ロボット)が増殖してしまうと、ライセンスの管理やロボットのメンテナンスが困難になってしまうため、複数ロボットをサーバー上で一括管理できる機能(RPA製品により製品付属または別製品)が必要です。

ロボット作成

必要な基礎知識

RPA製品は一般的に、直感的な操作が可能でプログラムコーディングの必要もなく、一定程度のITリテラシーがあれば容易に設定可能とされていますが、WebシステムのHTMLタグの知識や、Java・C#といった開発言語によるプログラミング拡張を行えるスキルがあったほうが開発を進めやすいです。

効率の良いロボット作成

基本的な機能や操作性自体はどのRPA製品でもそれほど大きな差はありませんが、操作対象となるアプリケーションの部品の認識方法や認識精度、効率の良い繰り返し処理の組み方などはRPA製品ごとに差があるため、製品に合わせたロボット作成を行う必要があります。

メンテナンス

正常稼働の確認

ロボットを一度作成して自動操作が問題なく動作したら終わりではなく、正常稼働しているか(動作が停止していないか・想定と異なる動作をしていないか)を定期的に確認する必要があります。

ロボットの調整や再作成

操作対象のアプリケーションやWebサイトの仕様が変更されると、正常に動作しなくなる可能性があります(押すべきボタンのID・ラベルの文字・色・形・場所等)。稼働状況を定期的に確認し、問題がある場合は調整や再作成を行う必要があります。

RPAは単純業務を自動化してくれる、まるで夢のような技術として語られがちですが、導入対象の業務を選定し、効率的な業務フローを考えてロボットに教え込むのは人の役割ですし、運用開始後もロボットが正しく動いているかどうかをチェックするのも人です。ロボットが持つ能力を存分に発揮してもらうためには、人のサポートが欠かせないのです。

まとめ

以上、RPAについての説明やメリット、導入方法などをご紹介しました。 定型業務の自動化が可能となるRPAは少子高齢化に伴う人材不足が進む昨今において、今後ますます普及していくことでしょう。

当コラムが、現在RPAの導入を検討している方の参考になれば幸いです。今後も、RPA製品に関する最新動向や導入事例、RPAとセットで導入が進んでいるAI関連などを随時お届けします。

現状の業務に課題をお持ちの方や、RPA製品の導入に際してお悩みがありましたら、ぜひお気軽に当社にご相談ください。