株式会社セゾン情報システムズは、ファイル転送ミドルウェア『HULFT』シリーズの開発、販売、サポートサービス等をはじめ、カードシステム事業や流通・ITソリューション事業など数多くのソリューションを手がける東証JASDAQ上場企業である。『HULFT』シリーズはファイル転送製品で14年連続国内シェア1位(2017年)という実績を誇る他、世界中で利用され、米ガートナー社の調査でも世界シェア2位(2016年)になるなど圧倒的な支持を得ている。注目度の高さから引き合いは年々増加しているが、製品デモやパフォーマンス検証に用いるデータの品質と作成工数について課題を抱えていた。
本事例では、同社がいかにして悩みを解決したのか、その本質に迫る。
セゾン情報システムズのHULFT事業部セールスエンジニアリング部は、『HULFT』シリーズ、『DataMagic』に加え、子会社である株式会社アプレッソ社の『DataSpider』などのパッケージ製品全般の営業支援を担当している。具体的な業務内容をセールスエンジニアリング部三課の杉本泰一氏とセールスエンジニアリング部二課の小野奈海氏に伺った。
「私が所属している三課は営業資料や紹介資料、リーフレットなどの制作を担当しています。制作後はプリセールスや営業、パートナー様に公開し利用していただくという役割を担っています。製品ごとに担当を分担する形ではなく、基本的に全ての製品を担当します」(杉本氏)。
「私が所属している二課はパートナー様を技術面でサポートする仕事を行っています。担当させていただいているパートナー様は比較的大手企業が多く、セミナーや勉強会の開催なども担当しています」(小野氏)。
セールスエンジニアリング部は課ごとに役割が明確化されており、営業支援について万全の体制が整えられているが、営業支援の実務面では以前から抱えている大きな2つの悩みがあったという。
1つは機密情報を含むデータの取り扱いに関する悩みである。特に、データ連携製品である『DataMagic』や『DataSpider』のデモをお客様先で行う際、使用するデータに個人情報などの機密情報が含まれていることも多く、セキュリティリスク回避策として擬似データ化の方法を模索していた。
もう1つは、ファイル転送製品における性能検証結果の精度に関する悩みである。『HULFT』には圧縮転送という機能があるが、転送速度などのパフォーマンスはお客様が保有するデータに依存するところが大きく、そのことを考慮していないテストデータで測定しても現実味の無い検証結果が出てしまい、検証の意味がないのだ。お客様が実際に使っているものになるべく似せたファイル(CSVやログファイル、売上データなど)の擬似データを手作業で作る方法も採ってみたが、本物に近づけようとすればするほどデータの作成時間や工数面での負担が増えてしまう。
同社がテストエースを知ったきっかけは、お客様からの提案だったという。
「お客様の大型汎用コンピューター移行案件で、移行先のオープン環境におけるマスキング処理を担う製品としてテストエースのことを教えていただき、当社製品と連携してみてはどうかという提案がきっかけでした。その後、当社の製品と導入業界が近く、相性も良さそうだということで比較的スムーズに導入検討に至りました」(杉本氏)。
実際にテストエースの導入に関わった杉本氏と小野氏がテストエースの第一印象について次のように語る。
「擬似データ作成までのステップが少なく、想像以上に簡単でした。そして、ただ簡単なだけではなく、作成された擬似データの品質が非常に高いと思いました」(杉本氏)。
「当社製品の『DataMagic』と似た考え方のインターフェースだったこともあり、非常に使いやすいと思いましたね。とにかくシンプルなので迷うことがなかったです。インストールさえできてしまえば、あとはプルダウンから選択して設定するだけで数十秒後には擬似データが完成します。また、細かい点ですがインストールマニュアルが充実していることに驚きました。これまで様々な製品を利用してきましたが、インストールマニュアルがこれほど丁寧な製品はなかったと思います」(小野氏)。
同社では以前から擬似データ作成に課題があったため、他の擬似データ作成ツールやサービスを利用した経験がある。テストエースの導入検討に際しては、それらの製品との比較も行ったという。
「他の製品とは使い勝手が全く異なります。作成される擬似データの品質は他とは雲泥の差ですし、自由度も高いです。テストエースを利用する一番のメリットは作成した擬似データがとにかく本物っぽいことであり、その点は他では真似できないレベルだと思います」(小野氏)。
「私は、テストデータが必要な時は、基本的にWebの無料サービスを使って作成していました。テストエースで作成する擬似データの方がもちろん高品質ですし、姓と名のカラムを分ける設定や郵便番号と住所が実在するデータであるなど、細かい部分が他の製品とは違いました。テストエース自身に氏名や住所、郵便番号など個人情報の擬似データがあらかじめ搭載されている点も良いですね。画面操作が簡単なところも好印象でした。マニュアルを見ながら導入しても、途中でつまずいたりすると、やはり印象が悪くなりますから」(杉本氏)。
実は、同社の子会社であるアプレッソ社が開発した『DataSpider』でも、データマスキングなら対応可能である。しかし、最近はBIツールとの連携デモが増えてきており、データマスキングによるデモでは求める出力結果が出せなかったり、出力結果を重視すると、機密データ漏えいのリスクにさらされていた。品質だけではなく安全性の観点からもテストエースの評価は高く、やがて正式導入が決定した。
テストエースを利用することで、従来であればテストデータの作成工数がネックで実現に至らなかったような提案も行えるようになり、提案活動の幅が広がったことが最大の導入効果だと小野氏は話す。
「私の場合は、お客様に大きな画面をお見せしながらデモをする機会が多く、擬似データの作成頻度も高いです。その場合、データの作成工数として余分に2日くらい見積もるのですが、このご時世に擬似データを準備するために遅くまで残業することははばかられるので、案件が立て込んでしまった場合はお待ちいただくこともありました。テストエースの導入後はその工数が不要になった上、擬似データの品質向上も実現できました。私はExcelが得意なので、Excelに吐き出したデータを使って何とか擬似データを作成していましたが、あくまで自作ツールのため、他の方が同じように擬似データを作るのは難しいと思います。その点、テストエースは操作が簡単なので、いつでも誰でも高品質な擬似データが素早く作成でき、非常に便利だと思います」
同社では膨大な擬似データが必要な案件については、他の提案方法を検討したり、状況により提案自体を断念することもあった。どうしても膨大な擬似データを準備しなければならなくなった時はデータ作成のための残業代やアウトソーシング費用が発生し、提案工数を増大させる原因にもなっていたという。さらに、手作業で作成する擬似データはどうしても似たようなものになりがちで冗長性が高いという問題も生じる。それでは『HULFT』で圧縮転送した際にファイル容量が小さくなり過ぎてしまい、正しい検証結果が得られないのだ。例えば、製品デモや検証時にはわずか数十分程度で済んでいたデータの転送時間が、お客様の本番環境で稼働させてみると倍以上の時間が掛かってしまうというような事態も起こりうる。このようなリスクがテストエースの導入で軽減できたのだ。
テストエースの導入効果を既に実感している同社では、さらなる活用イメージがあるという。
「商品名や商品コードの擬似データがあればさらに便利になり、様々なデモで利用できると思います。また、API化などにより擬似データの種類や量が増えて使いやすくなれば、より理想的ですね」(小野氏)。
「弊社のグループ企業で中国に子会社があるので、中国語対応が実現すればさらに活用の幅が広がると思います。中国では銀行や自治体との取引実績があるのですが、個人情報を国外に持ち出す際の法律があるなど個人情報の取扱いに関して非常に厳しい制約があります。そういったケースでもテストエースで個人情報を擬似データ化することで、大いに活用できると考えています。また、当社内には登録されているデータが全て個人情報を含むような非常にセンシティブな社内システムがあるので、そのようなシステムの開発環境でテストエースをもっと活用しようという動きがあります。他にも金融や流通の事業部、コールセンターで取得した個人情報の変換などにも利用できるのではないかと考えています」(杉本氏)。
同社がテストエースに寄せる期待は大きく、活用方法のアイデアも多く生まれている。今後、擬似データの利用シーンはますます広がっていくことだろう。
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