パラマウントベッドは主に医療・介護用のベッドの製造、販売を手がける会社だ。2014年6月、新たにベトナムの生産拠点である「パラマウントベッド ベトナム」が稼働するのにあわせて、生産管理システムを導入することとした。当初は少人数でスタートするため、予算も限られる中、金額、機能、ベトナム語対応の条件を満たし、さらにベトナムでのサポート体制も決め手となって「エグゼクス生産管理」(以下、エグゼクス)の導入を決めた。導入過程と運用開始後は、クラウドにより日本とベトナムで同じ環境を使用できることの利便性も実感。時間や距離のハンディなく日本からの支援を受けられるとともに、システムエグゼの現地法人(以下、システムエグゼベトナム)の力も得て、システム担当者を置かないベトナムの拠点で不自由なく運用することに成功した。工場のスタッフ達も自在に使いこなしている。
ベトナム工場の稼働当初の人数は、十数人。予算も限られる中、パラマウントベッドの社内では「Excelによる管理で充分ではないか」という意見もあった。だが、導入を主導したシステム統括部も、工場側も「いずれシステムを入れることになるのなら、最初から入れるべき」と主張した。途中から導入することの大変さに加えて、属人化の弊害が予想されたからだ。「将来を見据え、生産管理を見える化するために、最初からシステムの導入を考えました」。こう話すのは、グローバルエンジニアリング本部(当時は国際事業本部グローバル推進部)の菅野直也氏だ。
このような経緯から、「在庫、調達、生産に関する基本機能があり、海外でも使え、価格の安い製品」という条件を満たす製品を探すことになった。インターネットで様々な会社の生産管理システムを調べ、候補に残ったのはエグゼクスと別の会社の製品の2つだった。価格、機能、ベトナム語対応の3点はもちろん、工場の所在地とほど近いホーチミン市にシステムエグゼベトナムがあったことも決め手となり、エグゼクスの導入を決めた。加えて、導入時はそれほど重視していなかったものの、後々便利さを実感することになったのがクラウド対応だった。
ベトナム工場にシステム担当者はいない。日本から赴任している社員は、生産管理など現場を統括する役割の者たちだ。システムの構築や設定は、日本でシステム統括部とシステムエグゼが行い、稼働できる状態になったところで運用を担うベトナム工場の社員に引き継がれることになった。この流れがスムーズに実現できたのは、日本とベトナムで同じ環境で作業ができるというクラウドならではの特色と、システムエグゼベトナムの存在によるところが大きい。工場のベトナム人スタッフに対して、ベトナム人のエグゼクス専属サポート担当者がベトナム語のマニュアルを用いてベトナム語で教える。クラウドの活用とベトナム語で対応できるサポート担当者の存在が日本とベトナムの距離および言語というコミュニケーション上のハードルをクリアしたのだ。「構築は日本で、日本人同士で話しながらできたので、やりやすかったですね。検証もWeb上ででき、海外の出張先からアクセスしたこともありました。導入時も、オンプレミス(自社内構築)の場合は現地への長期出張が欠かせませんが、今回の導入では1週間の出張を2回行うだけで済みました」と、菅野氏は振り返る。
2014年6月、工場の稼働とともにエグゼクスの運用もスタート。エグゼクス専属サポート担当者が工場を訪れ、まずリーダークラスと作業者も含む5人のスタッフがわずか4日間ほどの集中教育で操作を覚えた。
その後、工場の規模が拡大するにつれ、エグゼクスを使えるスタッフの数も増えている。「リーダーだけでなく作業者レベルでもすぐに操作でき、使い勝手の良いシステムだと感じています」。こう話すのは、パラマウントベッド ベトナムでエグゼクスの運用を統括するゼネラル・ディレクターの細野貴之氏だ。画面もマニュアルもベトナム語で、困った時は気軽にベトナム語でサポート担当者に相談できる。「ベトナム語のメールが飛び交って、知らないうちに問題が解決していますね」と、細野氏は笑う。このように、スタッフ達が言葉のストレスなく自ら学び、疑問点なども解決できる環境だからこそ、エグゼクスを操作するスタッフの数も増やしていくことができた。ベトナム工場側で対応できない問題が発生すれば本社のシステム統括部が対応し、それでも解決しない時はシステムエグゼも加わり、リアルタイムで様子を見ながら対処ができる。クラウド×エグゼクス専属サポート担当者による支援体制は、運用開始後も万全だ。
もしもエグゼクスがなかったら、どうなっていたか。「在庫を正確に計算するのは難しいですね。棚卸しの時に数が合わないなどの問題も起きるでしょう。そうなると日本人社員の確認が必要となり、人を1人張り付けるなど人的コストも拡大します」と細野氏は言う。人的なミス・漏れ・勘違いなどは、手作業で行う限りどうしても発生してしまい、不安は拭い去れないという。「でも、みんなエグゼクスはすぐに覚え、棚卸しの時に差が出ても自分達で確認して直していました。彼らに自立的に働いてもらうという点でも、エグゼクスの効果は大きいです」(細野氏)。エグゼクスが属人化を防いだことはもちろん、スタッフが増えても入れ替わりがあっても自立的に回っていく体制の実現に一役買ったとも言えそうだ。
なお、会計システムへの連動は、会計システムに取り込むのに適した形でのデータの抽出ができるようになっているため、スピーディーな処理が実現できている。「導入時に、お金に直結するところを一番に考え、問題無いことを確認しました」と振り返るのは、菅野氏とともに導入に携わったシステム統括部企画開発課主管課長の本間陽一氏だ。一方で、まだ多彩な機能の全部は使い切れていないという自覚もある。導入から約2年が過ぎ、その間に新たな機能の追加もあった。菅野氏から引き継いで、現在主担当としてエグゼクスの運用を担っているシステム統括部運用管理課主任の伊藤泰司氏は、この2年間の機能更新や進化を踏まえ「現在は生産管理のみの運用ですが、エグゼクスの機能をもっと活用したり他のシステムとの連携などでERPパッケージに近づけられると良いと考えています」との構想も口にする。実際に使うのは工場だが、専門知識を持って支援し、一工場だけではない全社的な見地からシステムの最適化を進めるのがシステム統括部の役割だ。今後も工場と本社の連携、およびシステムエグゼの日本とベトナムも含めたチーム一丸で、エグゼクスをさらに活用していきたい考えだ。
パラマウントベッドでは、生産管理のシステムでクラウドを利用するのは今回のプロジェクトが初めてだった。「最初は抵抗や不安もありましたが、使ってみると問題がないとわかり、むしろ離れていても同じ環境で使える便利さや、我々の運用負担の軽減など様々な利点を実感しました」と菅野氏は言う。懸念点の一つだった通信環境も問題ない。「そういえば、止まったことはありませんね」と、改めて細野氏も振り返る。
最後に感想を聞いた。「日本もベトナムも、システムエグゼは対応が早いので、とてもありがたいです。システムを使い始めると、『今すぐ何とかしてほしい』ということもしばしば。そのような時に、対応の良さを実感しました。この製品を選び、この会社にお願いして良かった。工場の稼働開始とシステム導入が同時に進んでいた右も左も分からない時に、システムエグゼには本当に助けられました」当時を思い出し、実感を込めて話すのは、現地で生産管理の責任者を務める品川知徳氏だ。社員教育や様々な改善活動を進める一環でも、すでにエグゼクスはなくてはならないものだと感じている。
パラマウントベッド ベトナムの稼働開始から2年。生産するアイテムの数や量は数倍に増え、それを担うスタッフの数も約5倍になったが、エグゼクスの導入により属人化に陥ることなく順調に規模を拡大し続けることができている。エグゼクスはこれからも工場の成長と発展の一端を担っていくことになるだろう。
Copyright© SystemEXE,Inc. all rights reserved.