第2回:Excelによる予算管理の限界とは

エクセルでの管理会計・予算管理からの脱却

皆様、こんにちは。
「エクセルでの管理会計・予算管理からの脱却」というテーマでコラムを連載しております管理会計コンサルティング部の髙橋です。今回もよろしくお願いいたします。

 そろそろ春も近づき暖房をつける必要がないくらい暖かくなってきましたね。今年の冬は風邪やインフルエンザなどに罹ることもなく比較的健康に過ごせたと思います。しかし、まだまだ安心することはできません。今年は暖冬によりインフルエンザの流行が遅く、まだまだ感染のリスクがあるようです。3月は主にB型インフルエンザに注意とのことでした。実は私、小学生の頃に一度インフルエンザに罹ったきりで大人になってからの感染経験はありません。大人になってからのインフルエンザは本当につらいと聞くのでこのまま経験することなく健康に過ごしたいと毎年のように思います。職場にも迷惑かけちゃいますしね。

予算管理におけるExcel

さて、第1回コラムでは予算管理の考え方や重要性について触れましたが、今回は予算管理を行う上で多くの企業に愛用されているExcelについてお話ししたいと思います。

Excelは高機能な関数やVBAによる自動処理の組みやすさにより、非常に柔軟で複雑なシステムを構築することができます。そのためユーザにとって使い勝手がよく、日本企業のおよそ80%以上の企業がExcelを使用した予算管理を行っています。実際私自身も予算管理パッケージの営業に行く機会が多いのですが、伺ったお客様の多くが関数やVBAを用いた複雑なExcelのシステムを運用していました。

しかし、いくら柔軟だからと言ってもExcelは予算管理の為に作られたツールではないため、そのシステムには大きな欠点があります。

①非効率な作業の増加
Excelで作られたシステムで予算策定を行う場合、一般的に以下のような流れになります。
「担当者に登録画面を配付」⇒「担当者がデータを登録」⇒「管理者が登録画面を収集」⇒「データの集計」⇒「各種レポートの作成」
ご覧いただければわかる通り、データの登録や集計の前後に入力画面の配付や収集のような作業がどうしても発生してしまいます。これにより担当者が多ければ多いほどファイルの受け渡しに時間が割かれてしまいます。また、組織変更や予算の予算管理の粒度変更などにより一度配った登録画面に修正を加える必要が生じた場合、全担当者への配り直しが必要となります。
②運用管理上の問題
Excelは最大の特徴である柔軟性によりさまざまなカスタマイズが可能な反面、その柔軟性故にシステムが属人化しやすいという特徴があります。実際色々なお客様から話を伺うとExcelマクロが得意な担当者が当時のシステムを作成したが、部署移動などにより担当が者いなくなると、当該システムがブラックボックス化してしまい誰も改修できなくなってしまったなどという話をよく耳にします。また、簡単なパスワードでのロックを掛けられるとはいえ、担当者が行や列を勝手に増やしてしまい、後続のVBA処理が失敗してしまうという事象も管理者を悩ませているようです。
③予算管理で必須な機能への対応難易度
予算管理ではバージョンの管理が非常に重要になります。例えば期初に行う「当初予算」、半期で行う「修正予算」、その他にも「ベストケース」「ワーストケース」など様々のタイミング・用途で複数バージョンの予算を策定するのが一般的です。しかしExcelのみでこのバージョン管理を行おうとした場合、複数のシートを管理することになります。これにより意図せぬデータの不整合や、担当者内での2重管理など様々な問題が発生する可能性があります。また、Excelにはデータの変更履歴を追うような機能が基本的にはないため、誰がどのタイミングでデータを変更したかの把握や、ある時点のデータへ切戻しを行うことも非常に困難になります。

もちろんすべての企業が当てはまるわけではございませんが、実際に担当者の方にお話を聞くとこのような話題で盛り上がります。本コラムをご覧いただいている皆様の会社はいかがでしょうか。

Excelでの予算管理の卒業

上述した通り、Excelは便利ではありますがあくまで表計算ツールであるためExcelのみを使用した予算管理には限界があります。そのため事業の規模が大きくなり、管理するデータ量が多くなってくるにつれてExcel以外での管理方法が求められます。その場合の選択肢は大きく分けて以下の2つになります。

  • データベース、Excelなどを組み合わせてスクラッチでシステムを構築
  • 予算管理専用のパッケージを購入してシステムを構築

スクラッチにはスクラッチの、パッケージにはパッケージのメリットがありますが、今回は比較的安価で手軽に始めることができ、Excelの次のステップとして採用されることの多い、パッケージについて掘り下げてまいります。

主な予算管理パッケージには以下のようなものがあります。

  • Oracle Planning and Budgeting Cloud Service (PBCS)
  • Adaptive Planning
  • Anaplan
  • Cognos TM1
  • BzPLAN
  • Sactona
  • (弊社で導入実績がある製品や、よく競合として名前の挙がる製品を列挙しています。)

このまま各パッケージの特長についてお話ししていきたいところですが、本日のコラムはここまでとさせていただきます。

実は、私が尊敬してやまない上司の古川というものが以前連載していたコラム(→「管理会計システムの勘所」)の中で予算管理パッケージについて記載しています。次回はそのコラムと内容を区別するために、上述したパッケージの中から「クラウド型製品」をピックアップし、予算管理とクラウドの親和性についての話を交えてお届けいたします。どうぞお楽しみに。